「謝る必要はないんだ。君が今幸せなら、それに越したことはないのだから。振られた今だからわかるが、どうやら私は君を拓真への贖罪の道具にしようとしていたらしい。君を見守ることができれば、天国の拓真もきっと許してくれるだろう、とね。いやはや、君に対して失礼この上ないことだった。むしろ、私の方こそ申し訳ない」
突然大笑いされて呆然とする志希へ、今度は祖父の方が謝罪の言葉を述べてくる。
祖父の顔は、先程までとは打って変わって晴れやかだ。志希が誘いを断ったことで、祖父の中で何か吹っ切れたものがあったのかもしれない。父へ謝るダシにされたという意味で志希は怒るべきなのかもしれないが、そんな祖父の笑顔を見ていると、怒りはまったく浮かんでこなかった。
そして、志希への謝罪を終えた祖父は、荒熊さんへと視線を移す。
「荒熊さん、私が言えた義理ではありませんが、孫のことをよろしく頼みます」
「はい。確かに承りました」
丁寧に頭を下げる祖父へ、荒熊さんは両親の時と同じく即答ではっきりと頷いてみせる。
祖父も荒熊さんの迷いない返事に満足したらしく、安心したように微笑みながら顔を上げた。
「さて、話はここまでだろう。私は、これで失礼させてもらうよ」
そう言って、祖父は荷物を持って店から立ち去ろうとする。
ただ、志希は店から去ろうとする祖父の背中へ、「あの!」と呼び掛けた。
突然大笑いされて呆然とする志希へ、今度は祖父の方が謝罪の言葉を述べてくる。
祖父の顔は、先程までとは打って変わって晴れやかだ。志希が誘いを断ったことで、祖父の中で何か吹っ切れたものがあったのかもしれない。父へ謝るダシにされたという意味で志希は怒るべきなのかもしれないが、そんな祖父の笑顔を見ていると、怒りはまったく浮かんでこなかった。
そして、志希への謝罪を終えた祖父は、荒熊さんへと視線を移す。
「荒熊さん、私が言えた義理ではありませんが、孫のことをよろしく頼みます」
「はい。確かに承りました」
丁寧に頭を下げる祖父へ、荒熊さんは両親の時と同じく即答ではっきりと頷いてみせる。
祖父も荒熊さんの迷いない返事に満足したらしく、安心したように微笑みながら顔を上げた。
「さて、話はここまでだろう。私は、これで失礼させてもらうよ」
そう言って、祖父は荷物を持って店から立ち去ろうとする。
ただ、志希は店から去ろうとする祖父の背中へ、「あの!」と呼び掛けた。