「では、答えを聞かせてもらおうか」
「……はい」
祖父を真正面から見つめ返し、志希は短く返事をする。それから心を落ち着けるように一度深呼吸をし、自らが出した答えを祖父に告げた。
「せっかくの申し出、すごくうれしかったのですが……ごめんなさい。私はここに残ることにします」
志希の明確な意思が、カフェの中に響き渡る。
対する祖父はもう一口コーヒーを飲み、ゆっくりと口を開く。
「差し出がましいことだが、理由を聞かせてもらってもいいかな」
「私はまだ働き始めて一か月くらいですけど――この店が好きなんです。いつも見守ってくれる店長、妹みたいにかわいいお手伝いの女の子、温かく私を迎えてくれた常連さん……。みんながいるこの店で、私はもっと働いていたい。だから……“家族”と暮らせるのは魅力的ですけど、今はここに残りたいと思います」
選択の理由を問う祖父に、志希は両親へ語って聞かせたのと同じことを告げる。
それを真剣な眼差しで聞き届けた祖父は、「なるほどな……」と納得した様子で息をついた。
「これはまた、盛大に振られてしまったな。愛希さんの手紙をもらって、今度こそ後悔しないようにと思ったのだが……。いやはや、私はいつも一歩遅いようだね」
「後悔……ですか? それは一体……」
「君の父親――拓真とのことだよ」
「……はい」
祖父を真正面から見つめ返し、志希は短く返事をする。それから心を落ち着けるように一度深呼吸をし、自らが出した答えを祖父に告げた。
「せっかくの申し出、すごくうれしかったのですが……ごめんなさい。私はここに残ることにします」
志希の明確な意思が、カフェの中に響き渡る。
対する祖父はもう一口コーヒーを飲み、ゆっくりと口を開く。
「差し出がましいことだが、理由を聞かせてもらってもいいかな」
「私はまだ働き始めて一か月くらいですけど――この店が好きなんです。いつも見守ってくれる店長、妹みたいにかわいいお手伝いの女の子、温かく私を迎えてくれた常連さん……。みんながいるこの店で、私はもっと働いていたい。だから……“家族”と暮らせるのは魅力的ですけど、今はここに残りたいと思います」
選択の理由を問う祖父に、志希は両親へ語って聞かせたのと同じことを告げる。
それを真剣な眼差しで聞き届けた祖父は、「なるほどな……」と納得した様子で息をついた。
「これはまた、盛大に振られてしまったな。愛希さんの手紙をもらって、今度こそ後悔しないようにと思ったのだが……。いやはや、私はいつも一歩遅いようだね」
「後悔……ですか? それは一体……」
「君の父親――拓真とのことだよ」