「荒熊さん、志希のことをよろしくお願いいたします」

「お任せください。志希ちゃんが幸せになれるよう、おふたりの代わりに見守らせてもらいます」

 荒熊さんが返事をすると、両親は安心した様子で頷いた。
 そして、ふたり揃って再び志希を見る。

「ごめんね、志希。大人になるまで一緒にいてあげられなくて」

「僕らの所為で苦労を掛けて、本当にすまない」

 申し訳なさそうに謝ってくる両親へ、志希は泣かないように歯を食いしばったまま首を横に振る。
 しかし――。

「でもね、私も拓真も志希のことを愛してる。それだけは、忘れないで」

「わかっています。もう……絶対に忘れません」

 続けて母が掛けてくれた言葉で、あっさり涙腺は崩壊してしまった。
 この場面でその言葉は卑怯だ、と志希は思う。けれどまあ、決壊してしまったものは仕方ないので、せめて笑うことだけは継続する。

「じゃあね、志希」

「元気で。遠くから、ずっと見守っているよ」

 そう言って、両親は光の中へ消えていく。

「もう泣かないで。笑っていなさい」

 母のその言葉を最後にふたりの姿は完全に消え、真っ白の光だけが志希の視界に残った――。