「志希、今の生活は楽しいかい?」
「はい!」
父の質問に、志希は即答でイエスと答える。
「私、高校を卒業して、今はそこにいる荒熊さんのブックカフェで働いているんです。よくお手伝いに来てくれる明日香ちゃんは妹みたいでかわいいし、常連さんたちは皆さん優しくて……。だから私、今がすごく楽しいです!」
志希が瞳を輝かせながら、父へ言い募る。
言葉だけでは足りない。そんなもどかしささえも感じさせる志希の口調と表情に、父も表情を緩ませながら「そうか」と頷く。
「その楽しい日々を大切にね、志希。きっとそれが、君にとってのかけがえのない財産になる」
そう言って父はもう一度志希の頭を撫で、母の隣へ並んだ。
同時に、世界が光に包まれ始める。夢の終わりの時間。本の記憶から出ていく時が来たのだ。
志希の胸が、溢れた寂しさで重くなる。ただ、それと同じくらい、これ以上ここにいてはいけないということも実感として理解できた。
これ以上ここにいたら、荒熊さんが前に言っていた通り、戻れなくなる。……戻りたくなくなる。それは、両親が望むことではないだろう。だから志希は、とめどなく溢れようとする寂しさを抑え込んで、光の奥に消えていこうとする両親を見送るように笑った。
すると、両親がいつの間にか志希の隣に来ていた荒熊さんへ目を向けた。
「はい!」
父の質問に、志希は即答でイエスと答える。
「私、高校を卒業して、今はそこにいる荒熊さんのブックカフェで働いているんです。よくお手伝いに来てくれる明日香ちゃんは妹みたいでかわいいし、常連さんたちは皆さん優しくて……。だから私、今がすごく楽しいです!」
志希が瞳を輝かせながら、父へ言い募る。
言葉だけでは足りない。そんなもどかしささえも感じさせる志希の口調と表情に、父も表情を緩ませながら「そうか」と頷く。
「その楽しい日々を大切にね、志希。きっとそれが、君にとってのかけがえのない財産になる」
そう言って父はもう一度志希の頭を撫で、母の隣へ並んだ。
同時に、世界が光に包まれ始める。夢の終わりの時間。本の記憶から出ていく時が来たのだ。
志希の胸が、溢れた寂しさで重くなる。ただ、それと同じくらい、これ以上ここにいてはいけないということも実感として理解できた。
これ以上ここにいたら、荒熊さんが前に言っていた通り、戻れなくなる。……戻りたくなくなる。それは、両親が望むことではないだろう。だから志希は、とめどなく溢れようとする寂しさを抑え込んで、光の奥に消えていこうとする両親を見送るように笑った。
すると、両親がいつの間にか志希の隣に来ていた荒熊さんへ目を向けた。