「……もちろん、私も自分が悲観的に考え過ぎていたことはわかっていたんですよ。実際、お母さんはいつも私のことを大切にしてくれました。本当なら、捨てられるなんて考える必要はどこにもなかったのに……。でも、私の弱い心は、お母さんに大切にしてもらえばもらうほど、不安を膨らませていって……」
自分がいないところでは、自分のことを厄介がっているのではないか。“いい子”でいるから、母は自分を大事にしてくれているのではないか。少しでも気を抜いてボロを出したら、母に愛想を尽かされるのではないか――。
母が好きであることは変わらないのに、一方で志希はそんな疑心暗鬼に囚われてしまっていたのだ。
「私は、お母さんを信じ切れずに“いい子”の仮面を被って、最後まで疑っていることを隠し続けてしまいました。源内さんや明日香ちゃんを助けようとしたのだって、お母さんへの償いの代償行為で……。私はお母さんと似ても似つかない、本当に弱くて卑怯な人間なんです」
母を騙し続けた罪悪感から自らを蔑み、志希は俯く。
そして結局、すべてを明かして謝ることもできないまま、母は思っていたのとは別の形で志希の前からいなくなってしまった。
「何でお母さんが死んで、私が残ってしまったのでしょう。逆だったらよかったのに……。ううん、逆でなければいけなかったのに……」
志希が吐き捨てるように言う。そこからは、何でもいいから自分を罰したいという志希の罪の意識が見て取れた。
罰せられるべきは、自分だったはずだ。それなのに、なぜ母が死ななければならなかったのか。自分なんかが生き残って、何になるというのか。
この半年間、志希はそうやってずっと自問自答してきたのだ。
自分がいないところでは、自分のことを厄介がっているのではないか。“いい子”でいるから、母は自分を大事にしてくれているのではないか。少しでも気を抜いてボロを出したら、母に愛想を尽かされるのではないか――。
母が好きであることは変わらないのに、一方で志希はそんな疑心暗鬼に囚われてしまっていたのだ。
「私は、お母さんを信じ切れずに“いい子”の仮面を被って、最後まで疑っていることを隠し続けてしまいました。源内さんや明日香ちゃんを助けようとしたのだって、お母さんへの償いの代償行為で……。私はお母さんと似ても似つかない、本当に弱くて卑怯な人間なんです」
母を騙し続けた罪悪感から自らを蔑み、志希は俯く。
そして結局、すべてを明かして謝ることもできないまま、母は思っていたのとは別の形で志希の前からいなくなってしまった。
「何でお母さんが死んで、私が残ってしまったのでしょう。逆だったらよかったのに……。ううん、逆でなければいけなかったのに……」
志希が吐き捨てるように言う。そこからは、何でもいいから自分を罰したいという志希の罪の意識が見て取れた。
罰せられるべきは、自分だったはずだ。それなのに、なぜ母が死ななければならなかったのか。自分なんかが生き残って、何になるというのか。
この半年間、志希はそうやってずっと自問自答してきたのだ。