「志希ちゃんに、いいことを教えてあげよう。神様というのは、基本的に身勝手なのです。救いを求められても気分が乗らなければ手を貸さないし――求められてなくても、助けたい子を放っておくことはできないんだ」


 我が儘だからね、と荒熊さんはにっこり笑った。


「だから僕は、志希ちゃんが大人しく『助けてください!』って言うまで付きまとうよ。アライグマの執念は、しつこいぞ~」


 冗談めかした口調と何か触手みたいにうにょうにょした仕草で、荒熊さんは言う。しかし、動きはアホっぽくても、その目に茶化した様子は一切ない。そこにあるのは、純粋に志希を心配する優しさだけだ。

 志希は、そんな荒熊さんから視線を逸らすように俯く。


「さっきも言ったよね。僕は、志希ちゃんに幸せになってほしいって。今、君の心に何が巣食っているのか、僕にはわからない。でも、その巣食ったものが、いずれ志希ちゃんを壊しちゃうのだけはわかる。僕は、そんなことには――」


「……いけないのですか?」


 不意に志希が、荒熊さんの言葉を遮る。荒熊さんが観上げた志希の顔は、初めて見る皮肉げな笑みで歪んでいた。


「壊れてしまってはいけないのですか? 許されないことをしたら、罰を受けなきゃいけない。それで私が壊れるのだとしたら、それは起こるべくして起こった結果です。むしろ、受け入れるべきじゃないのですか?」


「志希ちゃん……」


「お母さんが死んでから、ずっと思っていました。いっそのこと、私なんて壊れてしまえばいいのにって……。お母さんが死ぬまでに謝れなかった私は、それくらいしないといけないんじゃないかって……」