* * *
店の片付けを終え、夕食も取り終えた志希は、自室のベッドの上で寝転がっていた。
一日の立ち仕事でむくんだ足の強張りが、じんわりと解けていく。いつもは至福の瞬間であるが、今日ばかりはそう言っていられる心持ちではなかった。
「お祖父さんやお祖母さんと一緒に暮らす……ですか……」
ベッドに寝転がったまま天井を見上げ、独り言ちる。
志希としても、祖父の申し出はとてもうれしいものだ。母の愛希が亡くなって天涯孤独になってしまったと思っていたが、まだ自分のことを“家族”と呼んでくれる人がいた。一緒に暮らそうと手を差し伸べてくれる人がいた。それ自体は、本当に幸せなことだと、志希も感じている。
そして、母にも……。自分が亡くなった後の志希の身を案じ、志希がひとりにならないようにしてくれていたことには、心の底から感謝している。
ただ……それが幸せなことであると自覚すればするほど、感謝すればするほど、考えてしまうのだ。
祖父母のもとへ行ってもいいのか。自分なんかが幸せになってもいいのか。母を騙し続けてきた自分に、そんな資格があるのか――と。
体を起こした志希は、父と母の遺影の前に立つ。
店の片付けを終え、夕食も取り終えた志希は、自室のベッドの上で寝転がっていた。
一日の立ち仕事でむくんだ足の強張りが、じんわりと解けていく。いつもは至福の瞬間であるが、今日ばかりはそう言っていられる心持ちではなかった。
「お祖父さんやお祖母さんと一緒に暮らす……ですか……」
ベッドに寝転がったまま天井を見上げ、独り言ちる。
志希としても、祖父の申し出はとてもうれしいものだ。母の愛希が亡くなって天涯孤独になってしまったと思っていたが、まだ自分のことを“家族”と呼んでくれる人がいた。一緒に暮らそうと手を差し伸べてくれる人がいた。それ自体は、本当に幸せなことだと、志希も感じている。
そして、母にも……。自分が亡くなった後の志希の身を案じ、志希がひとりにならないようにしてくれていたことには、心の底から感謝している。
ただ……それが幸せなことであると自覚すればするほど、感謝すればするほど、考えてしまうのだ。
祖父母のもとへ行ってもいいのか。自分なんかが幸せになってもいいのか。母を騙し続けてきた自分に、そんな資格があるのか――と。
体を起こした志希は、父と母の遺影の前に立つ。