ただ、そうなると、当然の疑問が出てくる。

「そうなのですか……。では、どうして私だけ違うのでしょう。なんで私だけ、荒熊さんの存在に疑問を持ってしまったのでしょうか……」

「それはおそらく、君の霊力が異常に強いんじゃないかな。だから、神様のデフォルト能力に抵抗できてしまった。僕、ここで店を開いて三年経つけど、こんな事例は初めてだ。おめでとう!」

「ええと……ありがとうございます?」

 志希の疑問に自身の見解で答え、ついでに拍手をする荒熊さん。
 そんな荒熊さんに、志希は戸惑い全開でお礼の言葉を返した。

 志希としては、「おめでとう」と言われても、喜んでいいのかどうなのか……。はっきり言って、微妙なところだ。
 そもそも“霊力”なんて言葉、漫画やアニメの中でしか聞いたことがない。それがあると何ができるのかさえ、志希にはわからないのだ。

「あの、荒熊さん。その“霊力”というものを持っていると、何か良いこととか悪いこととかがあるのでしょうか」

「ん~、どうだろう。ちなみに志希ちゃん、幽霊なんかは見えたりする方?」

「いえ、そういった類のものは一度も見たことがありませんが」

「そっか……。それじゃあ今のところ、別に益も害もないってところなんじゃないかな。ある意味、使いこなせていないってことだし。――まあ、今回みたいに神様の存在に疑問を持っちゃうことはあるかもしれないけど、そもそも人外の神様と遭遇すること自体稀だし、気にするほどではないでしょ」

 志希の疑問に、荒熊さんは例の考えるポーズ(かわいい)で答える。
 ひとまず怖い思いをすることはないとわかり、志希はホッと胸を撫で下ろした。

「そうですか~。よかったです。私、怖いのが苦手ですので、幽霊さんたちが見えるようになってしまったら困ってしまうところでした」

「とはいえ、本気で鍛えれば歴史に名を残すような巫女になれる可能性だってあるってことだけどね。その気がないなら、それまでのことだよ」

「あはは……。では、目指さない方向で」

 荒熊さんの簡易適性診断に、志希は苦笑しながらノーと答える。
 歴史に名を残す巫女とは、あれだろうか。卑弥呼みたいにでもなってしまうのだろうか。……ちょっとそれは、遠慮こうむりたい。気苦労が多そうだ。