なんとなく空を見上げる。
 ひとりぼっちに思えた昨日の帰り道は、冷たい雨だった。朝綺さんの部屋から見えたのは、美しい朝焼けだった。
 今、秋の朝の空は、高く突き抜けて澄み渡ってる。涼しい風が吹いてきて、街路樹がサラサラ歌った。
「あ~、なんかいろいろ、ホッとした~」
 あたしは思いっきり伸びをした。瞬一が下を向きながら、あくびを噛み殺した。初生は、ふぅぅ、と大きな息をついた。
「ホッとしたら、眠くてたまんねぇな」
「わたしも」
 そりゃそうだ。2人とも、ほとんど夜通し起きてたみたいだし。あたしだって眠いけど。
 瞬一が、とんでもないこと言い出した。
「笑音、サボって寝られる場所、知らないか?」
「へっ!? 何であたしに訊くの!?」
「知ってそうだから」
「知らないよ! あたしはサボんないもん」
「サボってなくても、その成績か」
「し、失礼なやつ!」
 あたしが大いに憤慨するそばに、なんと、サボり経験者がいたのでした。
「北側の中庭は見付かりにくいよ。職員室や教室から遠いし、木陰にいたら隠れられるの」
「初生、何で知ってるの!?」
「わたし、何度かそこでサボったから」
「ちょ、え……知らなかった」
 瞬一がいたずらっ子みたいな笑顔になった。
「じゃあ、そこ行こう。しばらく寝なきゃ、頭が働かない」
 初生が、花が咲くように笑う。
「わたしも一緒にサボっていい?」
「どうぞ。というか、案内してもらえほしい」
「了解です。秘密の場所、教えてあげる」
「ラッキー。で、笑音は?」
 ちょっとちょっと、お2人さん。いつからそんなに仲よくなったわけ? そんでもって、いつからそんなに悪い子になったわけ?
 楽しすぎるじゃん、初サボり!
「行く行くー♪ お昼寝タイムってことで!」
「昼じゃねえし」
「細かいこと気にしなーい!」
 ってことで、あたしたちは北側の中庭を目指して駆け出した。
「る~ららる~ら~、るららる~ら~♪」
 能天気な歌が止まらないよ。やっぱ、あたしはこうやって笑っていたいな。ハッピーは正義なのだ!