アルチュフ侵攻が一段落して、今度は草原の西へと軍を進めている。アタシたちが加わってるのは、ジョチさんとチャガタイさんが率いてる軍だ。ここが最前線らしい。
 トルイくんはチンギスさんの本軍で、先鋒と本軍の連絡役は……えっと、また名前が飛んじゃったけど、あの灰色っぽい男の子。
 今回のキーキャラクターは、チャガタイさん。キッパリした青色の毛並みが豪快に逆立った、少年漫画のヒーローっぽい次男坊。
「手助け、よろしく頼むぞ!」
「頑張りまーっす!」
 チャガタイさんはガシガシ大股で歩いてる。これから作戦会議なんだ。アタシたちも、もちろんついて行く。
「今オレたちが戦っている相手、ホラズム国は強大だ。町という町は、固い城壁に囲まれている。攻め落とすのは簡単ではない」
「じゃあ、どうやって攻めるんですか?」
「場合によりけりだが、蒼狼族は草原の民だ。騎馬を使ったスピードのある攻めが得意で、草原での戦いなら誰にも負けない。一方で、城壁に守られた町を攻めるのは苦手だ」
「ですよね~」
 チャガタイさんの眉間にしわが寄ってる。攻めあぐねてるらしいんだ。
 ニコルさんが話に入ってきた。
「本当は蒼狼軍のスピードを活かすべきだったんだ。こちらが少数だと知った敵軍が討って出てきたとき、城門が大きく開いた隙を突いて攻め入るべきだった」
 チャガタイさんが白い牙を見せてサワヤカに笑った。きらーん☆
「ニコルは賢者だな! オマエのような男が兄ならばよかった」
 チャガタイさんのおにいさんって、ジョチさんじゃん。カッコいいのに、チャガタイさん的には不満なの?
 シャリンさんがため息をついた。
「さっさと話を進めてちょうだい。ワタシの目的はゲームを楽しむことじゃないんだから」
 ですよね~。うっかりすると、ストーリーのほうに気を取られちゃうけど、いちばん大事なのはラフさんの魂の件だ。シャリンさんは気が気じゃないはず。
 なんかね、シャリンさんって親近感がある。瞬一と似てるんだよね。一生懸命な目的があって必死で、頭が切れて、ちょっと尖ったしゃべり方をする。怖い人って思われがちなキャラだけど、ほんとはそうじゃない。
「シャリンさんに訊きたいことがあるんですけど」
「何よ?」
「どうやったら、そんなに強くなれるんですか?」
 シャリンさんは、ため息交じりに言った。
「ワタシは生まれつき視覚が異常に発達してるの。目から入る情報を認識して処理する能力に長けてる。それだけよ。種も仕掛けもないし、インチキを使ってるわけでもない」
 なんとなく、わかった。シャリンさんって、特異高知能者《ギフテッド》なんだ。飛び抜けて高い知能を持ってる人。中学時代の先輩にもいたなぁ。飛び級して大学に行っちゃったの。
 ラフさんは無表情でシャリンさんの後にくっ付いている。最初は不気味に思ってたけど、だんだん、迷子みたいだなーって感じるようになった。すっごく不安そうに見える。