彼らは、2人じゃなかった。3人だ。男魔法使い、女剣士、男戦士。そのうちの1人に、アタシの視線は完璧に奪われた。
長い銀髪に緑のローブの、背の高いイケメン魔法使いさん! 切れ長の目は、エメラルドみたいなグリーン。エメラルド、見たことないけど。穏やかに整った顔立ちは、森が似合いそうに優しい。現実の森、行ったことないけど。
その彼が口を開いた。
「キミは、どうしてここに?」
きゃぁぁぁぁああああっ!! 来た、この声っ!! 姿も声もイケメンって、アナタ何者ですか!?
「ア、アタシ、えみ……じゃなくて、魔法使いのルラといいますっ! 仲間《ピア》がみんなハジかれちゃって、今、ひとりでっ」
イケメン魔法使いさんは、あごをつまんで考えるポーズをした。
「ボクたちのセーブデータに、どうしてキミがいるんだろう? ボス戦フィールドのここでは、データが交流するはずないのに」
女剣士さんが進み出た。ビキニタイプのメイルにシースルーの魔法布マント、腰にはレイピア、オーロラカラーの長い髪と、大きな目は鮮やかなローズピンク。小顔で華奢な体格で、抜群にかわいい。でも、ムッとした顔は気が強そう。
「不可解なデータの交流は、アイツが空けた穴のせいじゃないかしら?」
アイツ、と言いながら、女剣士さんはもう1つの人影を見つめた。
その人影は動かない。戦士タイプの男の人だ。黒髪で背が高くて、筋肉質な上半身は裸。肌には、赤黒いイレズミみたいな模様がビッシリ入っている。
しばし、みんな黙った。BGMだけが流れる。ボス出てこないなー、とアタシは思った。ボス戦フィールドに入ってこれだけ時間が経過してたら、バトルにつながるストーリーが始まっておかしくないのに。
沈黙が気まずい。やっぱ、アタシ、ここで姿を現わすのはマズかったんだろうか。秘密を見ちゃったって感じ? 口封じにアカウント消されたらどうしよう。
イケメン魔法使いさんが何かを思い付いたように、ポンと手を打った。整った顔がにっこりと笑う。
「ルラちゃん、ボクたちの仲間《ピア》にならないか?」
「ふぇっ!?」
まさかの申し出に、間抜けな声が漏れてしまった。不覚。魔法使いさんは気にする様子もなく、美声でアタシに説明する。
「ボクたちは事情があって、ピアズのプログラムに関与している。でも、予想外の手違いで、ルラちゃんのデータにも影響してしまったみたいなんだ。巻き込んで申し訳ないんだけど、よかったらボクたちを手伝ってくれないか?」
女剣士さんが、声を尖らせた。
「ちょっと、勝手に……」
「ストップ」
「何よ?」
「内緒にしててもらいたいだろ、この件?」
「そうね」
「だから、ルラちゃんには一緒にいてもらいたい」
「口止めを兼ねて、ってこと?」
「ああ」
交わされる相談。なんかシリアスな雰囲気。この人たちの正体から何から、全然わかんないけど。
「2人とも、困ってるんですね?」
アタシの質問に、イケメン魔法使いさんが答えた。
「率直に言って、かなり困ってる」
「だったら、アタシ、全力でお手伝いしますっ!」
困ってる人は助けなきゃ。それがアタシの信条だから。
イケメン魔法使いさんが改めて、にっこりした。うぅ、カッコいい!
「ありがとう。ボクはニコル。よろしくね、ルラちゃん」
「は、はいっ」
女剣士さんがオーロラカラーの髪をザッと払った。うわぁ、おねえさま、どうか笑ってくださいませ。美人すぎて怖いのよ。
「ワタシはシャリンよ。この件、他言無用だから。足を引っ張らずに、ついてきなさい」
「が、頑張ります」
黒髪の戦士さんは、じーっと立ったまま黙っている。微動だにしない。どこからどう見ても、この人がシリアスムードの原因だよね。データに穴を空けた張本人っぽい。
複雑な事情とやらは全然、推測もできない。アタシ、頭悪いし。でもまあ、とにかく。
新しい冒険と恋の始まりの予感に、アタシの胸は大いに高鳴っているのでありました!
長い銀髪に緑のローブの、背の高いイケメン魔法使いさん! 切れ長の目は、エメラルドみたいなグリーン。エメラルド、見たことないけど。穏やかに整った顔立ちは、森が似合いそうに優しい。現実の森、行ったことないけど。
その彼が口を開いた。
「キミは、どうしてここに?」
きゃぁぁぁぁああああっ!! 来た、この声っ!! 姿も声もイケメンって、アナタ何者ですか!?
「ア、アタシ、えみ……じゃなくて、魔法使いのルラといいますっ! 仲間《ピア》がみんなハジかれちゃって、今、ひとりでっ」
イケメン魔法使いさんは、あごをつまんで考えるポーズをした。
「ボクたちのセーブデータに、どうしてキミがいるんだろう? ボス戦フィールドのここでは、データが交流するはずないのに」
女剣士さんが進み出た。ビキニタイプのメイルにシースルーの魔法布マント、腰にはレイピア、オーロラカラーの長い髪と、大きな目は鮮やかなローズピンク。小顔で華奢な体格で、抜群にかわいい。でも、ムッとした顔は気が強そう。
「不可解なデータの交流は、アイツが空けた穴のせいじゃないかしら?」
アイツ、と言いながら、女剣士さんはもう1つの人影を見つめた。
その人影は動かない。戦士タイプの男の人だ。黒髪で背が高くて、筋肉質な上半身は裸。肌には、赤黒いイレズミみたいな模様がビッシリ入っている。
しばし、みんな黙った。BGMだけが流れる。ボス出てこないなー、とアタシは思った。ボス戦フィールドに入ってこれだけ時間が経過してたら、バトルにつながるストーリーが始まっておかしくないのに。
沈黙が気まずい。やっぱ、アタシ、ここで姿を現わすのはマズかったんだろうか。秘密を見ちゃったって感じ? 口封じにアカウント消されたらどうしよう。
イケメン魔法使いさんが何かを思い付いたように、ポンと手を打った。整った顔がにっこりと笑う。
「ルラちゃん、ボクたちの仲間《ピア》にならないか?」
「ふぇっ!?」
まさかの申し出に、間抜けな声が漏れてしまった。不覚。魔法使いさんは気にする様子もなく、美声でアタシに説明する。
「ボクたちは事情があって、ピアズのプログラムに関与している。でも、予想外の手違いで、ルラちゃんのデータにも影響してしまったみたいなんだ。巻き込んで申し訳ないんだけど、よかったらボクたちを手伝ってくれないか?」
女剣士さんが、声を尖らせた。
「ちょっと、勝手に……」
「ストップ」
「何よ?」
「内緒にしててもらいたいだろ、この件?」
「そうね」
「だから、ルラちゃんには一緒にいてもらいたい」
「口止めを兼ねて、ってこと?」
「ああ」
交わされる相談。なんかシリアスな雰囲気。この人たちの正体から何から、全然わかんないけど。
「2人とも、困ってるんですね?」
アタシの質問に、イケメン魔法使いさんが答えた。
「率直に言って、かなり困ってる」
「だったら、アタシ、全力でお手伝いしますっ!」
困ってる人は助けなきゃ。それがアタシの信条だから。
イケメン魔法使いさんが改めて、にっこりした。うぅ、カッコいい!
「ありがとう。ボクはニコル。よろしくね、ルラちゃん」
「は、はいっ」
女剣士さんがオーロラカラーの髪をザッと払った。うわぁ、おねえさま、どうか笑ってくださいませ。美人すぎて怖いのよ。
「ワタシはシャリンよ。この件、他言無用だから。足を引っ張らずに、ついてきなさい」
「が、頑張ります」
黒髪の戦士さんは、じーっと立ったまま黙っている。微動だにしない。どこからどう見ても、この人がシリアスムードの原因だよね。データに穴を空けた張本人っぽい。
複雑な事情とやらは全然、推測もできない。アタシ、頭悪いし。でもまあ、とにかく。
新しい冒険と恋の始まりの予感に、アタシの胸は大いに高鳴っているのでありました!