そんなことを言い出したのは最初に遠野君が犯人だと言い出した水野君だ。私はキッと水野君を睨みつける。
 水野君は私から睨みつけられるとは思っていなかったようだったか、「なんだよ。目つきのわりー女!」と悪態をついてきたのでもう相手するのをやめた。

「遠野君。一昨日の話なんだけど、校舎裏の屋外清掃用の倉庫に行ったときに誰かに会ったりしなかった? 遠野君のアリバイを証明してくれそうな人」

 私の質問に遠野君は考え込むように腕を組んだ。そして、おずおずと話し始める。

「証明してくれるかはわからないけど、副校長先生が花壇を見ていてすれ違ったよ。行きも帰りも」
「副校長先生……」

 副校長先生とは言わずもがな、学校で校長先生の次に偉い先生だ。遠野君のアリバイを証言してくださいと頼んでそれを聞いてくれる保証はない。
 でも、現在進行形で遠野君がクラスメイトの男の子に無視されて、さらに私まで『遠野を好き』とからかわれ始めている状況だ。

(こんなの絶対おかしい!)

 そう思った私はみんなに提案した。

「よし! 副校長先生に証言してもらえないか聞きに行こう」

 私の提案に朋ちゃんと遠野君と石川君はギョッとしたような顔をした。

「だって、遠野君はやってないならこんな状況はおかしいでしょ? ダメ元で行ってみようよ!」

 3人は顔を見合わせる。それから「わかったよ」と頷いた。

    ◇ ◇ ◇

 私達はその日のお昼休み、職員室の副校長先生を訪ねた。

 副校長先生の席は職員室の一番端に、他の先生達の机を横から見渡せるような形で設けてある。職員室の入口から中を窺うと、お昼休みの時間は職員室にいて授業準備をしている先生が多い。副校長先生も席で学校便りを読んでいるところだった。

「副校長先生!」

 私達が4人で副校長先生を訪ねると、副校長先生はびっくりした顔をしていた。自席にいた担任の佐藤先生も私達に気付いてこちらに近寄ってくる。

「副校長先生は一昨日の給食の直後、校舎裏の花壇を見ていましたよね? そのときに、ここにいる遠野君とすれ違った筈なんですけど、それを証言してくれませんか?」

 単刀直入な私のお願いに、副校長先生は怪訝な顔をした。そして、「どういうことか最初から説明してくれるかな?」と言った。

 私達は副校長先生と佐藤先生に一昨日の出来事を説明した。