そのとき、ほとんどのクラスメイトが教室にいたけれど、もちろん名乗り出る人はいない。
「あれ、まだQRコード読み込んでないんだ。返せよ!」
草壁君はなおも大きな声で叫ぶけど、私も含めて周りのクラスメイトは顔を見合わせるだけ。
そうこうするうちにチャイムが鳴って担任の佐藤先生が入ってくる。クラスメイト達は佐藤先生の姿を見て大急ぎで自分の席に座る。それで草壁君もようやく黙った。
翌日の朝、朋ちゃんと登校した私は教室の雰囲気がいつもと違うことに気付いた。
なんというか、みんなの雰囲気がいつもよりもよそよそしいのだ。
「なんかあったの?」
私と朋ちゃんは近くにいたクラスメイトの近藤さんに理由を聞く。近藤さんは内緒話をするように顔を近づけてきた。
「昨日、草壁君のバトマジカードがなくなったでしょ? あれ、遠野君の仕業らしいよ」
私は驚きで我が耳を疑った。
遠野君とは、クラスメイトの遠野功のことだ。3人兄弟の長男で、下に低学年と幼稚園児の弟が2人いる。大人しくてとてもそんなことするようには見えないし、遠野君は普段から学級委員の仕事を手伝ったりして、優しい男の子なのだ。
「本当に?」
思わず私が聞きかえすと、近藤さんは肩を竦めて見せた。
「昨日、遠野君が草壁君のなくしたバトマジカードを持っているのを水野君と戸田君が見たらしいの。駅前のコンビニで遠野君がそのバトマジカードを見ていたんだって」
「遠野君はなんて言っているの?」
「自分で買ったバトマジチョコスナックにたまたま入っていたって言っているみたいなんだけど、証拠がないらしいわ。そこのコンビニじゃなくて別のコンビニで買ったっていうんだけど、レシートは捨てたって言っていて。それに、昨日の学年交流給食の後に遠野君は一人だけ先に戻ったでしょ? そのときに盗ったんじゃないかって2人は言っていて……」
私と朋ちゃんは顔を見合わせる。
昨日は確かに、半年に一度の学年交流給食の日だった。1年生から6年生までが一緒に給食を食べて、交流するイベントだ。
言われてみれば、昨日の学年交流給食のときに遠野君はひとりだけ急いで先に戻っていた。でもそんなことって……。
朋ちゃんも今の話がにわかには信じがたいようだった。
「あれ、まだQRコード読み込んでないんだ。返せよ!」
草壁君はなおも大きな声で叫ぶけど、私も含めて周りのクラスメイトは顔を見合わせるだけ。
そうこうするうちにチャイムが鳴って担任の佐藤先生が入ってくる。クラスメイト達は佐藤先生の姿を見て大急ぎで自分の席に座る。それで草壁君もようやく黙った。
翌日の朝、朋ちゃんと登校した私は教室の雰囲気がいつもと違うことに気付いた。
なんというか、みんなの雰囲気がいつもよりもよそよそしいのだ。
「なんかあったの?」
私と朋ちゃんは近くにいたクラスメイトの近藤さんに理由を聞く。近藤さんは内緒話をするように顔を近づけてきた。
「昨日、草壁君のバトマジカードがなくなったでしょ? あれ、遠野君の仕業らしいよ」
私は驚きで我が耳を疑った。
遠野君とは、クラスメイトの遠野功のことだ。3人兄弟の長男で、下に低学年と幼稚園児の弟が2人いる。大人しくてとてもそんなことするようには見えないし、遠野君は普段から学級委員の仕事を手伝ったりして、優しい男の子なのだ。
「本当に?」
思わず私が聞きかえすと、近藤さんは肩を竦めて見せた。
「昨日、遠野君が草壁君のなくしたバトマジカードを持っているのを水野君と戸田君が見たらしいの。駅前のコンビニで遠野君がそのバトマジカードを見ていたんだって」
「遠野君はなんて言っているの?」
「自分で買ったバトマジチョコスナックにたまたま入っていたって言っているみたいなんだけど、証拠がないらしいわ。そこのコンビニじゃなくて別のコンビニで買ったっていうんだけど、レシートは捨てたって言っていて。それに、昨日の学年交流給食の後に遠野君は一人だけ先に戻ったでしょ? そのときに盗ったんじゃないかって2人は言っていて……」
私と朋ちゃんは顔を見合わせる。
昨日は確かに、半年に一度の学年交流給食の日だった。1年生から6年生までが一緒に給食を食べて、交流するイベントだ。
言われてみれば、昨日の学年交流給食のときに遠野君はひとりだけ急いで先に戻っていた。でもそんなことって……。
朋ちゃんも今の話がにわかには信じがたいようだった。