草壁君のバトマジカードがなくなったこと。遠野君が疑われていること。
 私と朋ちゃんは遠野君の疑いを晴らそうと真犯人捜しをしたけれど、見つからないこと。
 容疑者扱いされている遠野君がクラスメイトの男子から無視されていること。
 遠野君に話しかけた私は『遠野が好きなんだ』とからかいの対象になっていること。

 神妙な面持ちでそれを聞いていた副校長先生は、話が終わるとふむっと頷いた。

「話はわかったよ。遠野君を見たと証言するのは簡単だ。けれど、そのカードが見つからないならまた別の犯人探しが始まるかも知れないね? 例えば、他のクラスとか」

 副校長先生の言葉に石川君は「そうかっ!」と叫んだ。きっと、石川君の中ではすっかり他のクラスの生徒の仕業に違いないということになっているのだろう。でも、私はもう一つの可能性の方が気になった。

「実は私、ここじゃないかって思う場所が1カ所あるんです」

 おずおずと話し出した私にみんなの注目が集まる。私はみんなに朋ちゃんとまとめたノートを見せた。

「一昨日の時間割をもう一度見て下さい。中休みの後──」

 私の推理をひと通り聞いたみんなは確かにその可能性もあると頷いた。草壁君は国語の授業が始まったとき、きっとバトマジカードをまだ机にのせていたのだ。

「とにかく」と副校長先生は言った。「クラスでいじめの火種があるなら放ってはおけないね?」

 副校長先生は佐藤先生を見つめた。佐藤先生は冷や汗をかいている。佐藤先生にしたらこの話は寝耳に水だと思うから、ちょっと悪いことをしたかもしれない。

「はい。次の時間は臨時の学級会にしてクラス全員で話し合いをします」

 佐藤先生はそう副校長先生に伝えた。そして、遠野君の身の潔白を果たす最終決戦は5時間目になったのだ。
 
    ◇ ◇ ◇

「今日の5時間目は予定を変更して学級会を開きます」

 教室に入ってきた佐藤先生の言葉に、5年2組のクラスはざわついた。後ろに副校長先生まで来たのだからなおさらだ。

「一昨日の昼休み、草壁君の持ってきたゲームカードがなくなったそうだね。それに間違いはない?」

 佐藤先生の言葉に草壁君はびっくりした様子で慌てて立ち上がった。

「はい。中休みまではあった俺のバトマジカードが盗まれました」