「昨日、バトマジでさー」
「今日暇だったらバトマジやろうぜ」
こんな会話がそこかしこで聞こえる今日この頃。私――三田佳織の周りでは通称バトマジ、正式名称『バトルマジックレジェンド』というゲームが大流行している。
このバトマジは、人気の連載漫画が原作のゲームだ。
いじめられっ子だった主人公が偶然バトルマジックカードという魔獣召喚のカードを拾ったところから話は始まる。そして彼は魔獣使いになり、徐々に仲間を集めながら無双していくというよくあるお話だ。
その漫画にちなんだゲームが今巷では大流行で、ゲーム機を持っている子、特に男の子はクラスの殆どがこれをやっている。そして、このゲームではいかに多くの魔獣召喚カードを集めるかがキーになるのだが、実はこのカード、コンビニのお菓子の付録で買えるという特徴がある。
このコンビニのお菓子はバトマジとタイアップしたバトマジチョコスナックと言うものだ。100円のチョコスナックを買うと中にマジックアイテムもしくは魔獣が一つ記載されたQRコード付きのバトマジカードが入っている。
中にはいっているカードの半分くらいはマジックポイントの回復薬だけれども、ときには何度もガチャしないと獲得できないようなレアな魔獣カードが入っていることもある。
このバトマジカードをめぐって、私の通う馬頭小学校5年2組で事件が発生した。
◇ ◇ ◇
それはある日のお昼休みの事だった。教室の自席で友達の 園田朋美こと朋ちゃんとお喋りをしていた私は悲鳴のような大きな声に気付き、教室の一角に目をやった。
「俺のバトマジカードがない!」
まわりの生徒もその声に反応して教室の一角がざわざわと煩くなった。声の主であるクラスメイトの草壁智也は、今日持ってきたバトマジカードがなくなったと大騒ぎしていた。
騒ぎに気が付いたクラスの男子生徒がどんどん集まってきて、クラスメイト全員でのバトマジカード探しが始まる。
草壁君の机のまわりの床はもちろん、机の中もチェックした。最後は草壁君の鞄の中のものを全部出してから一つずつ鞄に仕舞っていくという作業を行ったけれど、バトマジカードは出てこなかった。
「だれだよ! 俺のバトマジカード盗ったのは?」
草壁君は真っ赤な顔をして周囲を見渡した。