不意打ちというか、予想外というか、唐突、突然、想定外にして、なんの前触れもなく起きた奇跡、なんて言ったら少し大袈裟だろうか。
 それでもやっぱり、彼女――かすみさんとの出会いは特別だった。
 だって……。

「掲示板のポスターを貼り替えにきたら、ちょうどおふたりのお話が聞こえてしまって。盗み聞きするつもりはなかったんですけど、とても面白そうな内容だったので思わず聞き入ってしまいました……。あ、でも、怪しい者ではありませんから!」

 かすみさんが言う『おふたりのお話』というのは、厳密にいえば先輩がさっき僕にしてくれた話のことだ。

 それは、とある映画のポスターに描かれた、よくわからない記号についてだった。

 彼女はその話によほど興味をそそられたのか、もじもじしながらも果敢に、勇気を出して話しかけてきた。僕たちとは初対面だっていうのに。

 先輩も僕も営業回りの途中だったから、本当はこのまま話し込むべきではなかったのかもしれない。でも、結局彼女の希望に応じざるをえなかった。
 それはそうだ。あんなに爛々と目を輝かせて迫られては、断るわけにもいかないだろう。

「だったら――俺がずっとモヤモヤしてた疑問、解決してくれるのかな?」