自分と同じように彼女に思いを寄せる男が、彼女の隣にいるようになった。


彼女を見れば、迷惑そうにしていることはすぐにわかった。


だけど、その男は自分よりも彼女の隣に立つに相応しかった。


それを自覚してすぐ、彼女に友達に戻ろうと伝えた。
彼女の反応を見るのが怖くて、手紙を渡してもらった。


その日は無心に料理を作った。
冷蔵庫にある材料を全て使い切った。


「……ちょっと、これだけも誰が食べるのよ」


偶然帰ってきていた姉が、睨むように言ってきた。


そんなの、こっちが聞きたい。


頑張ろうとした。
彼女に相応しい人になろうと思った。


彼女の喜ぶ顔が見たいと思った。


それなのに、自分でそれを壊した。
恋人関係にならなかったら、まだ友達でいられたかもしれないのに。


そしたら、友達を理由に手料理を食べてもらうことが出来たかもしれないのに。


作るだけ作って、自室にこもった。
その日は、馬鹿みたいに大声を出して泣いた。


あの日の心の傷は、未だに癒えていない。
それだけ彼女のことが好きだったのだと、思い知る。


だけど、もう、彼女に会うことすら叶わない。


俺は今日も、彼女がもし食べてくれたならと、その笑顔を想像しながら、恋人に料理を振る舞う。