しかし、言われてみれば確かに六花ちゃんの見た目は座敷わらしそのものだ。

 いや、世間一般に焼き付くイメージよりも何倍も、いや何百倍も可愛らしいことは置いておき、やっぱりあやかしだったのかと少し寂しくなる。


「そして六花、こちらは真澄さん。翡翠のおよ……ええと、知り合いの方です。今日はうちにお泊まりなそうなので、仲良くしてくださいね」


 今、いったい何を言い直したのだろう。何だかとっても重要なことのような気がするのは気のせいだろうか。問い詰めようにも、ぱっと顔を明るくして「おとまり⁉」と興奮したように声をあげた六花ちゃんに全意識を持っていかれる。


「だめだ、可愛い……じゃなくて。きょ、今日はよろしくね、六花ちゃん」

「りっちゃん!」

「りっちゃん? わかった、そう呼ぶね」


 おうちこっち!と嬉しそうに私の手をとって満面の笑みを浮かべるりっちゃんに早くも心を撃ち抜かれながら、私は翡翠と時雨さんを振り返った。

 ふたりともなぜか目をぱちくりと丸くしていて、私もつられて驚いてしまう。


「あの、どうしました?」


 客である私が、家主よりも先にお家にお邪魔してしまうのはさすがにまずい。今すぐ案内したいらしいりっちゃんをなんとか押し留めながら急ぎ尋ねる。

 すると、我に返ったらしい時雨さんがおかしそうに笑った。


「ああいえ、なんでも。ただ六花はこう見えて人見知りでして、あまり初対面の人に心を開くことはないのです。だから少し驚いてしまって」

「本当、珍しいこともあるものだな。さすが真澄だ」


 どうやら普段のりっちゃんは、あまり人懐っこくはないらしい。

 今の様子を見ればとてもそんなようには思えないけれど、私にとって子どもに拒絶されるのは心身共にやられて万死に値する案件なので心の底から安堵する。


「真澄ちゃまっ、はやくはやくーっ! りっちゃんがおうち案内するのよ!」

「わ、わっ、りっちゃん待って、そんなに引っ張ったら危ないよ!」


 きゃあきゃあとはしゃぐりっちゃんにつられて、思わず私も笑ってしまった。

 正直、人の子がこんな風に歓迎されるとは思っていなくて。通りに住む彼らは今もまだ遠巻きにこちらを眺めているけれど、それだって殺意の視線ではないことは明らかなのだ。

 単に『弥生の孫』として興味を持たれているからなのかもしれないけど、少なくともうつしよで日々感じていた粟立つような悪寒はない。こんなにも見渡す限り人ならざるモノに囲まれているのに、とても不思議な感覚だった。