「テーマは羅列系の言葉遊び。同じ韻を踏む言葉を無作為に集めてみました。予想もしない言葉が韻で繋がるところが面白いわけです。これらが、駄洒落として使える素材になり得る可能性を秘めているのではないか、と考えた次第です」
 棚に近寄って見ると、小箱のそれぞれにタイトルがついていて、中身はタイトルに沿った実物、もしくは――かなり精密なミニチュアのジオラマなのだった。
「これらは、末尾が『わ』の言葉となります」
 順に見て行くと、「()」の箱には、輪投げの遊びをしている子供の様子。次の「(いわ)」は積丹岬のカムイ岩。次は「(うつわ)」――これは、火焔式土器ではないか?  続けて見て行くと、
指輪(ゆびわ)」「埴輪(はにわ)」「(くわ)」「電話(でんわ)」「童話(どうわ)」――桃太郎だ。「メビウスの()」「琵琶(びわ)」「団扇(うちわ)」、そして――「チワワ」!
 駄洒落に使えるものなのかどうかはともかく、模型としての見応えはある。
「よく作りましたね。と言うより、このジオラマ、凄いです!」
 僕は感嘆の声を上げた。ジオラマはどれも、このためだけに片手間に作ったとは思えないクオリティなのである。
 すると唐突に「そして、私は西川(にしかわ)!」と言って自分を指さし、両手で頭上に丸く「輪(わ)」のポーズを決める西川代表。僕は完全に意表を突かれて、固まってしまった。笑ってあげるべきなのではあるが、それはちょっと無理であった。
「これらは、サンプルとして後の世代に残したい意向もあって、ちょっと大がかりにしたのです」と、何事もなかったように西川代表は説明を続ける。
 サンプルの言葉の選定基準は何だったんだろう。最後のあのセリフを言うため? と指摘するのはよけいなお世話(・・・)――あ、ちょっと毒されてきたのだろうか。
「気を取り直しまして――」と西川代表は何食わぬ顔で呼びかける。
「皆さんは、どんな言葉を集めてきましたか?」