「……どこにいる?」
低い唸り声のような声で武原さんが言った。
「は?」
「ラスボスだよ‼雫と付き合った時、風神雷神は征規くんと春那ちゃんだとわかった。春那ちゃんの方が怖かったぞ?上から下までジロジロ見て、あんなに可愛い顔のくせに無表情で『ふーん、いいんじゃない?』と言われた。風神雷神でもない、鬼だと正直思ったよ‼じゃあ、それより上のはずのラスボスはどこにいる?雫と付き合って3年以上、一回も姿を見せない。いつも風神雷神しか見ない。今、話を聞いてわかったよ、ラスボスが快晴くんだってことが。だから教えろ、ラスボスの墓はどこにある?今から行ける場所か?」
「今から?車で1時間もしないで着くけど、今から行く気なの?」
かなり驚いて聞く。
「今は夏場だ。そんなすぐには暗くならない。タクシーで行けばいい。プロポーズするのはここではないんだ。ラスボスの前でしてこそ、ラスボスが認めてこそ成立するんだよ‼」
大学生の時は熱血で鬱陶しいと思ったことはあるけれど、大人になってからはそんな素振りはあまりない。でも性格なんか変わらない。熱血漢で曲がったことが大嫌いなのはよくわかっていたはずだ。
鬱陶しいと思いながらも素直に自分の喜怒哀楽が表現できる正直な人だから好きになった。
武原さんはすぐに店員を呼んで、お会計とタクシーを頼んだ。私の意思はないのだろうか……。