今日は交通事故で家族を亡くされたご遺族のみなさんとの合同集会だった。

 ケアワーカーだからと言って、アレをすれともコレをやれとも言わない。根気強く、その心にある傷を見せてもらって、一緒に悩みましょう。そして、考えましょう。が、私の会社のモットー。
 たくさん採用は頂けたのだけれど、小さな会社の社長さんが、「ただ寄り添ってあげることが大事」そう言った一言でこの会社へ就職すると決めた。

 仕事が終わって帰りに飯でも食おうと恋人からラインが来たから待ち合わせ場所で待っていると。
 ドタドタと相変わらずの足音を聞こえて笑いそうになる。
「雫、おまたせ」
「武原さん、私そんなに待ってないから」

 サークルの同窓会で再会して付き合うことになった私たち。

 酔った勢いで告白してきたんだろうなと呆れていたけれど、たぶん、私が受験会場に早く来てしまった時から一目ぼれだったと思う。
 そして、約束通りに『半夏雨』に入り、雑用ばっかりしているのに嫌な顔をしなかったこと。
 一番の決め手は私が出した制汗剤の広告だったと、顔を赤らめながら言った。

 表彰式のインタビューで
「素敵なデザイナーさんを目指してください」
と言われたのに対して
「広告を作るのはこれが最初で最後です。私にはやりたい道があるので」
 そう言って、その場を凍り付かせた私がひどくカッコよく見えたのだと。

 部長としてもそうだったけれど、今は広告会社にライターとして入って、武原さんは熱血そうに見えて、服装も雰囲気も清潔感がある人だから女性にモテるんだろうな、くらいにしか思っていなかったから驚いた。

「雫、俺の先を見据えて付き合ってほしい」
 真剣に言ってくる武原さんに私は笑いながら、

「私はいいけど、武原さんのいいところをいっぱい知っているし。……ただねー、あの三人はなんて言うのかなぁ」

「あの3人って?」

「高校の友達。風神雷神みたいにカーってした顔で面接されるよ」

「風神雷神……あれ?3人でしょ?あと1人は?」

「うーん、ゲームで言うとラスボス」
 言いながら笑いが止まらない。

 風神雷神も自分にしては面白いこと言ったなとは思ったけれど、快晴を「ラスボス」と表現したことがおかしくてたまらない。

 私の親友だから「ラスボス」だよ。
 容赦しねーからな‼って言ってたもんね。

「まずは風神雷神から会っておこうか」
 不安そうな武原さんに笑顔を向けた。