家で写真をパソコンに落として、1枚1枚真剣に見る。
サークルにいたのは楽しいから。少しでも快晴を忘れる瞬間があるから。みんなが作った作品を見るのが好きだから。
まさか自分が応募することになるとは思わなかったけれど。
カウンセラーの道へ進みたい私が、『半夏雨』のメンバーとして最初で最後に作るであろう作品。
家に2週間こもって、入れたかった言葉を入れて完成した。
そして、あと数日で卒業する武原さんへ提出した。
私が出したものを見て、武原さんは最初戸惑っていた。
「雫、これは制汗剤の広告だってことはわかっているよな?」
「もちろんです」
「制汗剤は夏に使うことが多いことも?」
「知っての上です」
「いやー……こうくるかって正直驚いている。こういうパターンは今回のお題では存在しないと思っていたから。これは見る人間によっては評価が割れるぞ」
「このサークル大好きだけど、私には広告作るのもライター的な仕事をするのも向いていなくて、進みたい道もみんなとは全然違うし。そんな私が初めて作りたくて、このキャッチコピーを絶対生かしたい、伝えたいって思ったものです」
私の話を聞いた武原さんは冷めたコーヒーを飲みながら「うん、これはわからんぞ」と小さく呟いた。
「雫、クレジットの名前はローマ字と漢字どっちがいい?『半夏雨』は自動的に漢字表記だけど」
「わがまま言っていいですか?」
武原さんのごちゃついた机からメモ用紙を出して
『S.MAKIMURA & K.OOTSU』
と書いて見せた。
「これは共同制作なのか?」
「いいえ。モデルは友達にやってもらいましたけど、出すのならこの人の名前を出してもらわないと、この作品は完成しないんです。この名前も出せないなら作品の応募はしません‼」
武原さんは「共同制作と勘違いされるぞ」と釘をさしながらもオッケーしてくれた。