「それは来月の半ばから秋の終わりまで半年間、一斉に日本中にポスターが貼られる。大賞や準優勝はCMにはなるが、悔しいが優秀賞はCMにはならない。だけど日本中にポスターが貼られるってことも相当すごいんだよ。業界がその人物に注目しているんだ。そうだろ?牧村雫‼」
興奮気味の武原さんが指をさしてくる。
「はい……?」
いきなり名前を振られて困ってしまう。みんなもウソでしょ?って顔で私を見ている。
武原さんは受賞作一覧の冊子を出してパラパラとめくった。その本はまだ一般人は手に入れなれない冊子。受賞した私は持っているけれど。
開いたページを机の上に置く。みんなが集まる。
作品の下には『半夏雨』のクレジットと並んで『S.MAKIMURA&K.OOTSU』と書いている。
いや、私が頼んで名前の部分はそうしてもらった。
「え…?……牧村さんには失礼だけど、これが制汗剤の広告?」
ライター希望の部員が言った。
まあね、やっぱりおかしいでしょうね。
私だって、どうしてこれが受賞したのかさっぱりわからないから。
「クレジット名が『半夏雨』の他に牧村さんと…オオツさんって方になっているのは共同制作だから?」
「あー……突っ込みたいところがいっぱいあるだろうけれど、説明するには長いし。オオツさんって人は協力者だから入れてほしいって私の勝手な願いで、制作にはオオツさんは一切タッチしてないんだけれど、まだ武原さんが部長の時に応募したから、その辺は部長許可をもらったからなんだけど」
「雫のくせに鬼気迫る勢いで『オオツさん』を入れてくれなきゃ辞退するっていうもんだから、許したんだ。俺はこの広告を見た時に衝撃だったよ。構図、色、全てが今まで持ってきてくれたみんなとは全く違う。絵ずらもそうだけど、キャッチコピーがすごすぎて、これがあるから、この絵柄なんだって納得した。絶対審査委員の目に留まるとは思っていたから、「オオツさん」を入れようが出してみろってなったんだよな」