二人に醜態を晒したのが恥ずかしくて何も言えない私に春那が保冷剤とハンカチを渡してきた。

「コンビニでもらった。ハンカチは私のだけど。あんなに泣いたら目が腫れて酷いことになるだろうから、このクソ寒いのにアイス買って保冷剤くださいって言ったわ。車の中でアイスは二人で食べたけどね。ハンカチにくるんで目に当てた方がいいよ。明日、自分の顔見て悲鳴あげるよ」
 クスクス笑いながら春那が言っている。征規も何だかニヤニヤしている。

「で、スッキリしたのか?」
 改めて征規に聞かれえる。

「スッキリっていうか……自分の本当の気持ちがわかったのか、快晴の死を理解した……?理解しようとしてる?つまりはスッキリ?でいいのかな……?よくわかんない」

「ふうん。まあ、今までとは違うってことには変わらんな」
 征規が笑顔で言った。

「うん。それは間違いないのかも」
 私が頷くと、春那も笑顔で私を見ている。

「さて、俺たちも快晴にさっくり挨拶して帰るか。さみーし。アイスがきいてる」

 征規はそう言いながら線香をつけている。
 春那も征規に並んで優しい顔でお墓を見ている。
 手を合わせ終わると、お墓を軽く叩いて
「快晴またな。次は三回忌に会おうな」
 と言った。

 そして私を見て続けた。
「雫も快晴に『ま たな』でいいんだろう?三回忌来るのか?」

 私は目に当てていた保冷剤を取って、少し考えてから言った。
「またなでいいよ。今度から一人でも勝手に来られるし。三回忌も出るから」

「快晴―、春那様にとくと礼を言いなさいよ‼雫を連れてきて、確執を取り除いたのは私なんだからね」
 またお墓をベシベシと叩いている。

「確執ではないよ……そして、快晴に恩売りすぎ。恩着せがましいって怒られるよ」

 私が呆れて言うと、「確かに」と言いながらケタケタと笑った。

 お墓から車までを歩きながら、ふと空を見た。

 ポツポツと降っていた小雨がやんでいる。
 私が泣いている最中は多分降って気がする。記憶は曖昧だけれど。
 お墓の方を振り返ってみたけれど虹は出ていない。あの程度の雨では虹は出ないか。

 でも、お母さんが手紙に書いていた『心の雨はやんで虹が出る』ということは本当かもしれない。

 まだ快晴の死を認めることへのスタートに立ったばっかりだから、何年、何十年かかるのかはわからないけれど、いつか虹が出るのかもしれない。