「夏だったかな?快晴が行くはずだった大学の天文学部。未確認の星だか惑星だかを発見したってニュースになってたよ?本当ならそこに快晴もいたかもしれないね。見つけた学部の人たちの写真も出てた。快晴は無愛想だから写真に写っても不機嫌な顔になるんだろうね」
私は笑いながらベラベラと喋っている。
本当は快晴とたくさん話をしたかった。
返事がなくても、相手がお墓でも、そこに快晴がいるのなら、いっぱい話したかったんだ。
固くきつく閉めたはずの蓋はいとも簡単に開いた。
本当はここに来なくても簡単に開けられたのかもしれない。そのくらい簡単に開いたから。
私はせきを切ったように自分の大学の話、サークルの話、バイトの話、車を買った話を喋り続けた。
聞いてほしいことが本当にたくさんあるから。今まで話せなかったから、話は止まらない。
征規と春那は戻ってくる気配がない。
マフラーを取りに行くっていうのは口実で、私が快晴と向き合えるようにしてくれているのだと思う。
どのくらい私は喋り続けていたのだろう。喉がカラカラに乾く。
「快晴のために持ってきたけど、これ飲んでいい?喉乾いちゃった」
快晴の好きな炭酸ジュースの蓋を開ける。喉を鳴らしてゴクゴクと飲んだ。
「まっず‼久々に飲んだけど本当にまずい‼こんなの大好きなんてバカなんじゃないの?」
オエってなりながら文句を言った。
飲みかけのジュースをお墓に戻す。
それから、立ち上がってお墓を見つめる。
「ねえ、ジュースがまずかったから、文句ついでに気持ち悪いことしてもいい?」
もちろん返事はないけれど、お墓にそっと手を当てる。
それからお墓を抱えるように抱きしめた。
冷たいを通り越して凍てつくくらいな感触のお墓を抱きしめながら、私は声を上げて泣いた。
あの時のように。
快晴の合格発表を見に行った時のように。