そんな私を征規と春那がチラリと見た。
「快晴―、今日はスペシャルゲストが来たよ。スペシャルってほどでもないけどね。雫がようやく快晴に会いにきたよ」
春那がさっきと同様にお墓を叩きながら明るく言った。それから私の方をチラリではなく、しっかりと見る。
花とジュースとお菓子を抱えている私の足は震えている。寒さからではない。
怖いから。
『大津家』と書いたお墓から目が離せない。
ここに快晴は眠っている。
世界のどこかに存在していると死に蓋をして過ごしてきた私に『大津家』のお墓は現実を突きつける。
快晴は二年前に事故死した。
もう私が生きている世界にはいない。
死んだ。この世にいない。
もう二度と、ニカって笑う快晴には会えない。
「雫。せっかく花買ってきたんだから、飾ってやれよ」
征規に言われてハッとなる。
「あ……。う、うん。そうだよね」
息を深く吐いて、お墓の前にきた。
私の歩き方はギクシャクしているだろう。
それよりも恐る恐る近づいている、という表現が合っているような気もする。
しゃがんでお花を飾る場所に征規が持ってきた桶から水を少し入れて花を飾った。
「ねえ、マフラー車の中に忘れた。寒いから取りにいきたい」
突然、春那が征規に言う。
「はいはい。一緒にいくか?車は俺のだし。雫は少しの間、一人でも大丈夫だろ?」
「うん、大丈夫だよ」
私が頷くと二人はさっさと歩いて行ってしまった。