何だか気まずいまま春那と別れてアパートへ帰った。
郵便ポストを見ると、手紙が入っている。
裏返して差出人を見ると、お母さんだった。
施設へ入所して3年以上経ったけれど、良くはなってきているけれど、まだ時間がかかりそうだと、先月こっちに来たお父さんが言っていた。
杏奈は小6になり、友達もたくさん出来て楽しく過ごしていると、お父さんは笑顔だった。お正月に九州に帰省するとき、きっと杏奈の笑顔を見られるのかな?と楽しみにしているのと、せっかく免許を取って安い軽自動車をバイトして買ったのだから、杏奈をどこかへ連れて行ってあげようと思う。
部屋に入って荷物を置いて、ベッドに腰をかけながら手紙の封を切った。
お母さんの相変わらずキチンと丁寧な文字を目で追う。
『雫へ
元気ですか?
大学生活は楽しいですか?
私は施設の計らいで、別の施設の方たちと同じ過ちをおかしたことを話したり、交流を深めたりしています。
自分たちがいかに愚かだったかを思い知らされることで辛くもありますが、私と同じ気持ちの人がいるのは心強く、頑張って立ち直り、早く雫や杏奈に会って謝罪出来る日を待ちわびています。
雫は快晴くんの死を受け入れられたのでしょうか?気がかりです。
ちゃんと笑えているのだろうか?と思っています。
快晴くんが亡くなったとお父さんから聞いた時、なんて言葉を雫に送ればいいのかわかりませんでした。親なのに情けないです。
でも、あの時、私なりに雫に送った、虹は必ず出るという言葉に嘘はありません。
2年が経とうとしていますが、あの時の言葉をもう一度言います。
雫、止まない雨はありません。あなたが快晴くんのことで今も傷ついているのは想像できます。
だから、また言います。
悲しみの雨が上がったあとには虹が出ます。
きっと雫に虹が見えたとき、快晴くんとの思い出は美しいものになると願っています。
いつか、雫と杏奈に会える日を夢見て、私は頑張ります。
母より 』
お母さんが元気に過ごしているのは嬉しい。
止まない雨はない。虹は出るか……。
快晴の死に対して前向きになれない私に虹は出るはずがない。
お母さんの気持ちはありがたいけれど、それは前向きにならないとダメなことだ。
カーテンを開けて窓の外を見る。雪がシンシンと降っている。今年は寒いから季節外れの雨は降っていない。
冬の雨は嫌い。
いや、いつの季節でも、もう雨なんか嫌い。