「あ、雫」
ケーキをすっかり食べ終わった頃に春那が言った。
「ん?」
「年が明けたら快晴の三回忌だよ?この間、征規と会って話したけど、一周忌の時みたいにまた来ないつもり?」
「ああ……」
私は快晴の葬儀の日から今まで、お墓参りすら行っていない。一周忌も快晴のご両親が誘ってくれたけれど行かなかった。お盆もお彼岸も月命日でもそんな理由がなくても快晴のお墓参りに行く機会はたくさんあるのに行っていない。
行きたくない。現実を突きつけられるのが。怖いから。
もう二度とあんな気持ちになりたくないから。だから蓋をして快晴との出来事は心の奥にしまっている。
「征規、少し怒ってたよ?悲しい気持ちはみんな一緒なのに雫は逃げているって」
「逃げている……、うん。逃げているんだろうね」
私が素直に認めたのを見て春那は困ったような笑顔を向けてくる。
「辛いけど、雫は快晴が亡くなった時から会いにも行ってないじゃん。気を悪くしないでほしいし、雫が辛いのは理解しているつもりだけど、私も征規も雫は快晴に失礼なことをしているって思ってるよ?大事な親友が会いにも来てくれないって快晴かわいそうだよ」
「うん……わかってるよ」
下を向いて呟いた。