湯葉の専門店で、ランチコースを食べてみることにした。刺身湯葉と汲み上げ湯葉という料理を食べていたけれど、私も征規も無言になった。
 春那が「美味しい」と微笑んでいるけれど、首を傾げてしまう。

「なんていうか、やっぱり豆腐だな」
 快晴がボソッと呟いた。
「私には大人の味すぎて美味しさがよくわからない……」
 私は正直に感想を言った。征規も頷いている。
「味覚がガキなんだねー。私は美味しいと思うけどねー」
 春那はパクパクと食べている。
「お前の味覚がオバサンなんだよ」
 征規が言うと、「はあ?」と睨んでいる。

 春那以外はあまり食が進まなかったけれど、
なんとか全員完食をして店を出た。
「私には大人の味すぎて敷居が高かったなー」
 私がため息をついていると、快晴が言った。
「オッサンとオバサンになったらまた食いに来ようぜ。その時は激ウマだぞ」
「なんかガッツリしたものが食いたいな!夜飯は焼肉にしない?そして俺はハンバーガーが今すごく食いたい」
 ほとんどがあっさりした味付けだから征規にはかなり物足りなかったみたいだ。

 オッサンとオバサンか……。

 何十年後になるかわからないけれど、その時はみんなで「美味しい」と言いながら食べるのかな?

 私は中年か初老になった自分たちを想像しようとしたけれど全然浮かばなかった。