要領よく回るコースがイマイチわからないながらもお寺や桜を見て、京都を事前に少しだけ調べてきた私が「地主神社という場所も恋愛のパワースポットなんだよ」と教えると、春那は「行く!!」と張り切りだして、快晴と征規は「もうその神社でいいじゃん」と言ったけれど、「うるさい!!春日大社も行く!」と怒鳴られていた。

 地主神社へ参拝も終わり、清水寺に行って、それから湯葉を食べて春日大社へ向かうことになっている。私たちは全員、湯葉を食べたことがなく興味があったから食べてみようとなっていた。

 清水寺に着いて『清水の舞台』に立つと想像よりずっと高いことに驚いた。けれど景色は圧巻だ。私はその景色にのまれそうになる。

 征規と下を覗いていた快晴が柵に足をかけて前のめりになった。
「ちょっと!!落ちるよ!!危ない!!」
 私と春那が焦って止めようとすると、征規が快晴のパーカーのフードを捕まえて引っ張り後ろへ戻す。振り向いた快晴は珍しくケラケラと笑っていた。征規も笑っている。
 周りにいた観光客もビックリした顔をしている。

「くだらないことすんな!!」
 と、春那が怒鳴った。私は驚いて心臓がドクドクと鳴っていた。
 そんな私たちに変わらず笑いながら快晴は言う。

「よく『清水の舞台から飛び降りる』って聞くけど、すげー怖いわ。覚悟するってことなんだろうけど、飛び降りたら確実に死ぬわ、これ。それだけ命がけの覚悟なんだな」

「俺も近くで見ていたけど怖いよな、マジで」
 快晴と征規の言葉に春那はため息をついた。

「バカは征規だけだと思っていたけど……。快晴も十分バカだね」

「雫もやってみるか?」
 快晴が手招きをしたけれど、驚きから段々と怒りが込み上げてくる。

「快晴は絶対に早死にするから!!絶対にね!!罰当たり!!バカ!!早死にしてしまえ!!」
 私が顔を真っ赤にして怒っていることに征規と春那は驚いていた。けれど快晴はニヤリと笑う。

「俺がそう簡単に死ぬかよ。アホ。早死になんて絶対ないね」

「絶対する!!」
 私はそう言って、舞台からズンズンと歩いて行った。