受験日が偶然にも同じだった私たち4人。
受験前日に決起会だと春那の家に集まった。その時にやっと私の下手くそな手作りの御守りを3人に渡した。
春那は喜んでくれて、ピンクではないからかもしれないけれど。
「馬鹿にもらった御守りが大宰府よりご利益あんの?」
と言った征規に蹴りを入れた。
どうせ快晴も馬鹿にするんだろうな。と思っていたけれど、邪魔にならないように小さめに作ったおかげか、スマホケースのストラップの穴に御守りの紐を通した。
「このケース、地味にストラップの穴あるんだよね。これつけて明日いこう」
そんな幼稚なものつけて恥ずかしくないの⁉と私の方が真っ赤になる。
そんな私を見て、快晴は「ご利益期待していますよ」と爆笑した。
朝にグループラインで頑張ろうと励まして会場に向かった。
気合を入れ過ぎて開場予定より1時間半も早く着いてしまって寒空の外で途方にくれていると
「受験生さん?」と声をかけられた。
人の好さそうな男性の学生っぽい。目元が優しく見える。
「俺は係で今日いるんだけど……かなり早くきたね」
腕時計を見ながら、たぶん少し呆れているだろう。
「すみません‼その辺のコンビニとかで時間潰すので気にしないでください‼」
頭を下げて門の外へ出ようとすると、
「待って」
と言われた。その声で振り向く。
「どの学部を受けるの?」
「え……?受ける学部は心理学ですけど、絵で人の真相心理を知れたりとか、それを勉強したいのと、後は、結構有名なサークルがあって、コピーライターとグラフィクと写真などをやっているってオープンキャンパスで聞きました。企業からも依頼されるって……それって面白そうだなー……と思いました」
その人は私の答えを聞いてニッコリ笑った。
「ちょっと試験会場じゃない棟なんだけど、時間潰しにもなるしついておいでよ」
「え?ここの学生じゃないのに入っていいんですか⁉」
私のビックリをよそにスタスタ歩いてしまう。慌てて小走りで後を追った。
別棟の扉を開けて、少し廊下を歩いたら、
『ルームA』と書いたプレートが見える。
「どうぞ、入って」
その人に言われておそるおそる中を覗くと、パソコンやら機材がビッシリあって、奥には大きさがバラバラなポスターがある。
「これって……?」
「これはキミがさっき言っいていたサークルの部屋。ちなみに俺は2年生だけど副部長」
「副部長なんですか?」
驚いて振り向くと、その人が立っているドアの横にわりと大き目なキャッチコピーのついたポスターがある。
「あ‼これシャンプーのCMのやつ‼」
「知っているんだ?これはうちら学生が作ったんだよね」
「ええ‼そうなんですか?」
驚きながらも、部屋にある作品などを一通り説明してもらって感心しながら眺めていると、
「うわ‼開場して15分もたっいてる」
その人は慌てて謝ってくれて私が笑ってしまった。
「大丈夫です。受験の緊張ほぐれてよかったです」
私の言葉に、はーっとため息をついた。安堵したのだろう。
会場へ向かおうとする私にその人は声をかけた。
「もし受かったら、うちのサークルおいでよ。キミ、センス良さそうだから入ってくれると嬉しい。俺は武原。覚えておいて‼待っているからね」
私は笑って言った。
「ぜひ入りたいですが、その前に受かったらの話ですね」