明日、春那の家へ帰る私は、お父さんの家のリビングで裁縫をしている。

「お姉ちゃん、まだ起きてたの?」
 トイレへ行ったらしい杏奈がそばによってきた。

 お父さんの家は杏奈が来ることになってから団体の支援もあって全面バリアフリーで、家庭用の医療機器もそろっている。

「ん?ちょっとね、作りたいものがあって」

 私は手元を動かしながら答えた。

「それ何?あ、御守り?大宰府で買ったのに、自分でも作ってるの?」

 杏奈が覗いてくる。

「学問の神様よりは効果ないけどね」
 笑いながら言う。

 自分も含めた4人分の御守りを縫っている。私なりの感謝と一緒に頑張ろうねって意味を込めて。3人がいたから笑っていられる私がいるのだから。春那は受験が終わっているけれど、やっぱり4人で同じ物を持っていたいから作っている。

 御守りを作る練習で最初に作ったオレンジの小さな袋を杏奈に渡した。

「これは杏奈のだよ。元気でいられますようにって意味の御守りね」

「杏奈にもくれるの?」
 パッと顔が明るくなる。

「最初に作ったから下手だけど。オレンジは太陽の色。天気がいいと元気になれそうでしょ?」

「やったー‼天気がいいと気持ちいいよねー。あ、でも快晴くんに会う時って天気悪くない?征規くんや春那ちゃんと会った時は天気よかった気がする」

 杏奈にまで雨男と思われているのか。

 そう思うと笑ってしまった。