一年三組の教室に入ると、もうかなりの生徒がいて、ガヤガヤとしている。
私の席は……と机に貼り付けてある出席番号の紙をキョロキョロと探しているとカバンが、スマホを見ている女の子に当たってしまった。
「あ!ごめんなさい!」
私が慌てて謝ると、その女の子はニッコリと笑って「大丈夫だよ」と言った。
物凄く可愛い子だ。長い髪を綺麗に巻いてそんなにメイクをしていないのに目が大きい。睫毛も長くてクルンとしている。こんな可愛い子に今まで生きてきて会ったことはない。
「私は博井 春那《ひろい しゅんな》。あなたは?」
声も可愛らしい。なんということだ。こんな美少女が存在するなんて。
「あ、牧村 雫です」
恐縮しながら答えると、博井さんはニッコリ笑って言った。
「雫ちゃんって名前、可愛いね。雫って呼んでもいい?私クラスに馴染めそうになくて、友達になってくれたら嬉しいな」
「え?私が?」
こんな可愛い子と友達なんて、話が合うのだろうか?
「私のことも春那って呼んでね」
「う、うん。春那、よろしくね」
確かに教室の中を見ても、既に何個かグループが出来ていて、話に花を咲かせている。
春那を遠巻きで見ているグループもいる。可愛すぎて近寄れないという感じなのか。
私も友達を作るのが苦手だから春那と二人で仲良くするのがいいのかもしれない。顔面偏差値は雲泥の差があるけれど。
征規なんか最早男子達と爆笑をしている。
愛想が良くて人懐っこい征規はすぐに友達が出来る。小学校の頃も、中学の頃もそうだった。クラスの中心に征規はいつもいたから、今回もそうなるのだろう。
高校生活。どんなことが待っているのか。
楽しいといいな。征規がいるから楽しいであろうけれど。春那とも仲良くなれればきっと楽しい。
窓の外は生憎の雨だけれど、高校生活に少し期待をしながら入学式が始まるのを待った。
入学して数週間が経った。
学校にも少し慣れてきて、春那とも仲良くなれていると思う。
春那は想像していた通り、昼休み、放課後と男子に呼び出しをされている。こんなに可愛いから告白されるのは当然だろう。
でも……。
今日も昼休みに二年生に呼び出された春那が戻ってきた。なかなかカッコいい人だったから、もしかしたら付き合うのかな?と購買のパンをかじりながら待っていたのだけれど。
「どうだった?」
私が聞くと、春那は物凄く嫌そうな顔をして言った。
「自分に自信あんのか知らねえけど自意識過剰だっつーの」
春那は初対面の時よりもかなり口が悪い。
男みたいを通り越してオッサンみたいだ。
だけど、呼び出しされたり、男子に声を掛けられると天使のような可愛い声で話すのだ。
多分、私と会話する時が春那の本性なのだろう。
「春那って口悪いよね?」
私は思っていたことを、とうとう口に出した。
食べかけのお弁当のウインナーを口に運んでいた春那が私を見た。
「私ね、本当は口も悪いし性格も悪いの。ピンクとか可愛い物が好きそうって言われてるけど、全然‼ドクロ柄大好きだし。自分で言うのもアレだけど、私ってこんな容姿だから本性を出せないし、女子には当然嫌われてるんだよね」
なるほど……。
入学してから、用事がない限り春那に話しかける女子はいない。美人っていうのも大変なのだろうな。
なんだか妙に納得してしまう。春那とこうして仲良くいられるのは、私たちは干渉されるのが好きではないところが合っているからなのかもしれない。
「雫は見た瞬間、気が合うって感じたんだよね。私の毒舌も気にしないって思ったんだ」
ニッコリ笑う顔は物凄く可愛いけれど、春那は詐欺師になれるのではないかと思う。
「まあ、私はどんな春那でも好きだけどね」
私もそう言って笑いかけた。
そんなやり取りをしている私たちに征規が近寄ってきた。
「おー、お前ら今日の放課後暇か?」
春那には征規は幼馴染だから別に詐欺行為をしなくてもいいと話しをしている。春那も征規は好みではない。とハッキリ言っているから、春那の毒舌にはお互い慣れているのだ。
「は?なんで私がお前の為に時間作らなきゃいけないんだよ」
早速、春那が毒を吐く。
「春那―、そんなこと言うなよ。ほら、2個向こうの駅前にショッピングモールがオープンしたじゃん。今日行こうぜ」
ショッピングモールと聞いて春那の顔が変わった。オープンしたら行きたいね、と私たちは話をしたからだ。
「快晴と四人で行こうぜ」
そう言って征規が振り向いた先には、目つきが悪い男子が仏頂面で立っている。
大津 快晴。|《おおつ かいせい》
征規と一番仲がいい友達。
春那は快晴のことも好みではないから、征規と同じように接しているけれど、私は正直苦手なタイプだ。何を考えているのかわからないし、不愛想だし、無口だし。
征規がなぜ快晴と仲がいいのかわからない。征規と仲が良くなければ一生話をしないタイプだ。
快晴はいいヤツだ。と征規は言うけれど、どこがいいヤツなのかわからない。でも、征規は人を見る目はあるから、私が知らないだけでいいヤツなのだろう。苦手意識は消えないけれど。
「それなら行く。雫もいいよね?」
春那に言われて「いいよ」と返事をする。
そんな私をジロリと快晴は見た。
快晴はきっと私のことが嫌いなのかもしれない。
私の席は……と机に貼り付けてある出席番号の紙をキョロキョロと探しているとカバンが、スマホを見ている女の子に当たってしまった。
「あ!ごめんなさい!」
私が慌てて謝ると、その女の子はニッコリと笑って「大丈夫だよ」と言った。
物凄く可愛い子だ。長い髪を綺麗に巻いてそんなにメイクをしていないのに目が大きい。睫毛も長くてクルンとしている。こんな可愛い子に今まで生きてきて会ったことはない。
「私は博井 春那《ひろい しゅんな》。あなたは?」
声も可愛らしい。なんということだ。こんな美少女が存在するなんて。
「あ、牧村 雫です」
恐縮しながら答えると、博井さんはニッコリ笑って言った。
「雫ちゃんって名前、可愛いね。雫って呼んでもいい?私クラスに馴染めそうになくて、友達になってくれたら嬉しいな」
「え?私が?」
こんな可愛い子と友達なんて、話が合うのだろうか?
「私のことも春那って呼んでね」
「う、うん。春那、よろしくね」
確かに教室の中を見ても、既に何個かグループが出来ていて、話に花を咲かせている。
春那を遠巻きで見ているグループもいる。可愛すぎて近寄れないという感じなのか。
私も友達を作るのが苦手だから春那と二人で仲良くするのがいいのかもしれない。顔面偏差値は雲泥の差があるけれど。
征規なんか最早男子達と爆笑をしている。
愛想が良くて人懐っこい征規はすぐに友達が出来る。小学校の頃も、中学の頃もそうだった。クラスの中心に征規はいつもいたから、今回もそうなるのだろう。
高校生活。どんなことが待っているのか。
楽しいといいな。征規がいるから楽しいであろうけれど。春那とも仲良くなれればきっと楽しい。
窓の外は生憎の雨だけれど、高校生活に少し期待をしながら入学式が始まるのを待った。
入学して数週間が経った。
学校にも少し慣れてきて、春那とも仲良くなれていると思う。
春那は想像していた通り、昼休み、放課後と男子に呼び出しをされている。こんなに可愛いから告白されるのは当然だろう。
でも……。
今日も昼休みに二年生に呼び出された春那が戻ってきた。なかなかカッコいい人だったから、もしかしたら付き合うのかな?と購買のパンをかじりながら待っていたのだけれど。
「どうだった?」
私が聞くと、春那は物凄く嫌そうな顔をして言った。
「自分に自信あんのか知らねえけど自意識過剰だっつーの」
春那は初対面の時よりもかなり口が悪い。
男みたいを通り越してオッサンみたいだ。
だけど、呼び出しされたり、男子に声を掛けられると天使のような可愛い声で話すのだ。
多分、私と会話する時が春那の本性なのだろう。
「春那って口悪いよね?」
私は思っていたことを、とうとう口に出した。
食べかけのお弁当のウインナーを口に運んでいた春那が私を見た。
「私ね、本当は口も悪いし性格も悪いの。ピンクとか可愛い物が好きそうって言われてるけど、全然‼ドクロ柄大好きだし。自分で言うのもアレだけど、私ってこんな容姿だから本性を出せないし、女子には当然嫌われてるんだよね」
なるほど……。
入学してから、用事がない限り春那に話しかける女子はいない。美人っていうのも大変なのだろうな。
なんだか妙に納得してしまう。春那とこうして仲良くいられるのは、私たちは干渉されるのが好きではないところが合っているからなのかもしれない。
「雫は見た瞬間、気が合うって感じたんだよね。私の毒舌も気にしないって思ったんだ」
ニッコリ笑う顔は物凄く可愛いけれど、春那は詐欺師になれるのではないかと思う。
「まあ、私はどんな春那でも好きだけどね」
私もそう言って笑いかけた。
そんなやり取りをしている私たちに征規が近寄ってきた。
「おー、お前ら今日の放課後暇か?」
春那には征規は幼馴染だから別に詐欺行為をしなくてもいいと話しをしている。春那も征規は好みではない。とハッキリ言っているから、春那の毒舌にはお互い慣れているのだ。
「は?なんで私がお前の為に時間作らなきゃいけないんだよ」
早速、春那が毒を吐く。
「春那―、そんなこと言うなよ。ほら、2個向こうの駅前にショッピングモールがオープンしたじゃん。今日行こうぜ」
ショッピングモールと聞いて春那の顔が変わった。オープンしたら行きたいね、と私たちは話をしたからだ。
「快晴と四人で行こうぜ」
そう言って征規が振り向いた先には、目つきが悪い男子が仏頂面で立っている。
大津 快晴。|《おおつ かいせい》
征規と一番仲がいい友達。
春那は快晴のことも好みではないから、征規と同じように接しているけれど、私は正直苦手なタイプだ。何を考えているのかわからないし、不愛想だし、無口だし。
征規がなぜ快晴と仲がいいのかわからない。征規と仲が良くなければ一生話をしないタイプだ。
快晴はいいヤツだ。と征規は言うけれど、どこがいいヤツなのかわからない。でも、征規は人を見る目はあるから、私が知らないだけでいいヤツなのだろう。苦手意識は消えないけれど。
「それなら行く。雫もいいよね?」
春那に言われて「いいよ」と返事をする。
そんな私をジロリと快晴は見た。
快晴はきっと私のことが嫌いなのかもしれない。