「これは杏奈の分」

 九州のお父さんの家に帰省している高校3年生の冬休み。

「何―?って御守りじゃん。しかも『学業』って」

「だってせっかく九州に来たのに太宰府天満宮行かないのはもったいないじゃない。もうすぐ受験だから友達全員分買ったんだ」

「杏奈に学業の神様の御守りっている?」

「いるでしょ、将来医療系の道に進みたいんでしょ?勉強難しいからしっかりやりなさいね?」

「そんなこと言っても、杏奈はまだ小学生だから将来の夢変わるかもしれないのにさ」

「あれ?心の病気の人を助けてあげたいんじゃなかった?お母さんをいつか迎えに行くんでしょ?だったら御守り持って頑張れ」

 私がそう言ってニッコリ微笑むと同時に、
「鍋できたぞー」とお父さんが声をかけた。