肩をポンっと叩かれて悲鳴を上げそうになった。
驚いて振り向くと快晴がいる。
「え……?なんで?」
「春那から聞いたから」
快晴が後ろを振り返ると、征規と春那が電信柱の陰に隠れているつもり……なのだろうけれど、丸見えだ。
春那には昨日の夜にお母さんに会うことを伝えている。春那も春那のご家族も私のことをかなり心配してくれた。弱気は見せたくなくて「大丈夫」と笑って言ったのだけれど。
「あれ、隠れてるの?」
私は笑いをこらえて言った。
「隠れて見守るつもりらしいけど……丸見えだよな」
快晴も笑いをこらえている。
吹き出しそうなのを抑えていると、快晴が言った。
「怖いか?やっぱり」
「うん……、強がってみたけど、実際は少し怖いかな」
素直に自分の気持ちを言うと、快晴が手を握ってきた。
「じゃあ、行くぞ」
「え?ちょ……、何?」
私が驚いているのを無視してチャイムを押した。
私が押せなかったチャイムをあっさり押してしまう快晴にポカーンとする。
しばらく待っていても、中から何も反応がない。
私のことは本当にもうどうでもいいってことなのかな?
そう思っていると、顔にポツっと水滴が当たる。空を見上げると、雨が降り出してきていた。