「これからが本題なんだが……」
お父さんは息をついてから言った。
「施設に入る前にお母さんに会うことができる。雫はどうしたい?お母さんに会いたいか?もう二度と顔も見たくないか?答えはどちらでもいい。顔も見たくないと言われても当然なのだから」
「え……?」
お母さんに会う?
よく冷えた店内なのに汗がブワっと吹き出てくる。
会ったらまた杏奈の姉としてだけしか望んでいないと言われる?
アイスカフェオレを持つ手からも汗が伝わるのか少しだけ温くなってしまった気がする。
そんな私を見てお父さんは私の頭にそっと手を置いた。
「無理に会わなくていい。雫が拒絶することは当たり前だから。会うのはやめような?」
頷きかけたけれど、あの時、話を聞いてくれたみんなの顔が浮かんだ。
『ふざけんなって言ってやれよ』と言った快晴、それに同意して私をしっかり見てくれた征規と春那。
「お父さん」
声が少し震えるけれど、グッと身体に力を込める。
「私、お母さんに会う。言いたいことがあるから」
お父さんは驚いた顔をしたけれど、私はしっかりお父さんを見た。