これからのことを考えながら、コンビニで征規が買ってきたオニギリを食べていると、春那の部屋を誰かがノックした。

 春那がドアを開けると、眼鏡をかけた大人なイケメンが立っていた。目元が春那に似ている。

「一番上の兄貴。公務員で学校教育なんかの仕事をしてるんだ」

 一番上のお兄さんは笑いながら
「サボリだなんて、教育を仕事にしている僕は注意すべきなのかな?」
 と言った。

 春那がしばらく部屋から出ていて、その間にどうしたらいいのかを考えていたのだけれど、どうやらこのお兄さんに話をしていたらしい。

「雫ちゃん」
 お兄さんに呼ばれて「はい」と返事をする。

「雫ちゃんはお母さんからモラハラに該当する行為を受けている。だから、国の機関が雫ちゃんをすぐに保護もできると思う。母親とは接見禁止を取ることもできる可能性もある。もちろんお母さんの心のケアが目的だよ?でも、妹さんには会えるよ。ただ……お母さんは精神的な施設のような場所で、ちゃんと向き合える治療をするかもしれない。雫ちゃんを支援団体の施設で保護もできるし、もう高校二年生だから、我が家に大学入学までいてもらうことも多分、可能だと思う。お父さんがいる九州へ転校してもいい。だた……僕が春那から話を聞いて、快晴くんや征規くんも同意見だと思っているけど、このまま何も言わないで離れるのは悔しくないかな?」

「え?」

「言ってやれよ、母親に。ふざけんなってさ」
 快晴が言った。

「お母さんに?私が?」

「そうだよ‼俺も快晴と同じ意見だよ‼おばさんに言ってやろう‼馬鹿にするんじゃねーよ‼ってさ」
 征規も身を乗り出して言う。

 春那も力強く頷いた。

「そんなことをしてもいいの?」

 私が驚いて言っても、「いいんだよ‼」と三人が言った。

「雫ちゃんと妹さんのこれからについては、大人の僕たちに任せて、みんなの言う通りにお母さんに気持ちをぶつけてみてもいいと思うよ」
 お兄さんはそう言ってニッコリと笑った。