「柚夏。奈穂はまだ来てないのか?」
「奈穂は呼んでないよ。呼んだのは鳴だけ」
自分が呼ばれたなら当然奈穂も呼んでいると思っていたらしい鳴は、訝しそうに眉を上げる。
あたしは気づかないふりをして、鳴の手を引く。
「日当たり良いし、窓際行こう!」
「あ、ああ……」
二人で、壁にもたれ掛かるようにして座る。
何か聞きたそうにしている鳴を促して、お弁当を広げた。
「ねえ鳴。あたしと初めて会ったら時のこと覚えてる?」
「覚えてる。一年の時、菜穂が席が近くて仲良くなっていた柚夏のことを、同じ中学だった私に紹介してくれたんだったな」
「そうそう。あたし最初ね、鳴のことちょっと怖そうだなって思ってたの。だって、美人だしあたしよりずっと大人っぽいし~」
「そんな風に思われてたのか」
あたしはうなずいて、大きく息を吸う。