「柚らしいっちゃらしいなあ」
「あはは」
あたしは頭をかきながら笑ってみせる。
同じようにしてしばらく笑った奈穂は、やがてわざとらしく咳払いをした。
「実は、二人に報告があります」
照れたように頬を薄桃色に染め、垂れる髪をそっと耳に掛けた。
「うちにもとうとう、彼氏、できました」
照れ笑いしつつ、ピースサインをあたしと鳴に向ける奈穂。
「え──」
おめでとう。
友達としてすぐに掛けなければならないその言葉を口にする前に、あたしは反射的に鳴の顔を見た。
だから、鳴の目から、すっと光が消えるのがわかった。
「そうか。良かったな」
その声からも、どこか感情が抜け落ちているような気がする。