鳴は微笑ましそうにあたしを見ているだけだった。
わかっていたこととはいえ、少しガックリする。
「でもさ、柚も鳴もモテるのに、彼氏つくんないよね?なんで?」
「私は恋愛なんかしている暇があるなら、将来のために勉強する。恋は今じゃなくてもできるけど、大学に入るための勉強は今しかできない」
「うわ、さすが鳴!サバサバしてるなあ。柚は?」
奈穂に邪気のない笑顔を向けられ、あたしは咄嗟に言葉を出せない。
「えと…ほら、好きとかいう気持ち、よくわかんないから」
何とか小さな声で絞り出す。
嘘だ。
人を好きになる気持ちがどんなのかなんて、痛いほど知っている。だから苦しんでるんだ。
ついでに、鳴が彼氏をつくらない理由も、嘘だ。