「・・・きれいだよ」

 薄水色のあたしの目をじっと見つめて、由伊は微笑む。

「父上の血が濃いのかな、ひなせは・・・」

「氷凪は翡翠色だもんね。由伊は琥珀色なんでしょ?・・・見てみたい」

「・・・そのうちね」

 時間が経てば自然と戻るというこの変調は、あたしの躰が確実に不老へと進化した証でもある。

 あたしより歳上の筈の由伊は、17、8歳の頃の姿形からもうあまり変わっていない。
 じきにあたしも体内時計の針がゆっくりと遅れはじめて、普通の人達の中にはいられなくなる。

 その為の約束。氷凪との。
 25歳になったら外の世界との繋がりは断つこと。それももう決断の時なのかも知れない。

「ねぇ・・・由伊」

「うん」

「ひととは違うって・・・こわい?」

「・・・そうだね。そう思う時も・・・あるよ」

 由伊は、あたしをやんわりと胸に抱き寄せる。

「でも自分が何者でも僕は僕だから」

 自分以外の何者にも、なれはしないから。

「・・・由伊は強いね」

「うん。だからひなせは弱くてもいいよ」

 そう言って由伊は優しく笑った。




 あたしの為に他人の精を喰らい尽くして、それが罪と呼ばれるものなんだとしても、由伊はその罪を冒し続けるんだろう。

 その罪で出来てるあたしを。遊佐は、無月は、支癸は。これからも解っていて抱くんだろう。

 それが、あたしたちの摂理。
 生き続けるかぎり。永劫に。
  

 

                            
 【完】