もう話すことがなくなってしまったのでそそくさと立ち去った。


台所では和花さんがちょうど薪に火をつけたところだった。


「彩葉さま、どうされたんです?」
「ご飯を炊くのね?」
「はい。これがうまくいかなくて……」


私はかまどを覗き込んで口を開く。


「最初は強火気味がいいの。薪をもう少し追加してみて」


実は桜庵では土鍋でご飯を炊くこともあったので、火加減についての多少の知識はあるのだ。

助言すると、和花さんは「いつも弱火でした」とその通りにしている。


「中からポコッポコッという沸騰する音が聞こえてきたら吹きこぼれないように薪を減らして弱火にしてね」
「わかりました!」


彼女はなんだか楽しそうだ。


「私も料理を作ってもいいかしら」
「もちろん! またおいしい食事がいただけるんですね。あ……。でも、白蓮さまが休むようにとおっしゃっていましたよね」
「もうずいぶん調子がいいの。私にもなにかさせて。あっ、そうだ。宿にはお客さんはどれくらいくらいいるの?」