彼らは前世の私との関わりを覚えているのだからすんなり受け入れているようだけれど、私はまだそこまでの境地に達していない。


私は窓辺に移動して晴れ渡る空を見上げた。

こんなに穏やかなのに、黒爛の陰謀が渦巻いているなんて信じられない。

しかし、動かした目が悠然と流れる川をとらえたとき、背筋に冷たいものが走った。


「あそこで……」


前世の私は命を落としたのだ。


そもそも生まれ変わるということが本当にあることすら知らなかったけれど、ここのあやかしたちの反応を見ていると、私はたしかに存在したのだと思う。

幽世で生きていくことを覚悟するほど白蓮さんを愛していたとしたら、『またいつか会いましょう』という言葉をどんな気持ちでつぶやいたのだろう。

記憶はないはずなのに、そのときの無念がこみあげてくるようで呼吸が乱れる。


黒爛を許せない。

もし白蓮さんがおらず黒爛に陽の世まで領分とされていたら、不幸なあやかしがもっと増えたはずだ。


その彼が私との幸福な時間を糧にして力を増大させていたのなら、協力して陽の世を守るべき?

激しく心が揺れ動き、考えがまとまらなくなった。