「あっ、そういうかわいいじゃなくて。なんと言ったらいいのか……。まずいな、叱られる」


天を仰いで絶望の表情を浮かべる彼は、奥歯にものの挟まった言い方をする。

なにか隠してる?


「とにかく、白蓮さまの愛はそれはそれは深いということだけ覚えておいてください。なにかあればすぐに呼んでください。私はこれで」


鬼童丸さんは一方的に言い残して踵を返していった。

残された私は、ひとりで頬を赤らめる。

本人に愛を囁かれるのもムズムズするが、第三者から告げられても固まるしかない。


「雪那さんといい勝負?」


ふたりとも何百年という単位で恋をしているとは、びっくりだ。


鬼童丸さんと別れて部屋に入ったものの、考えることが多すぎてまずなにをしたらいいのかわからない。

勘介くんに用意してもらった鏡の前に立ち、頬の傷と首に残る黒爛の手の跡に触れる。

白蓮さんが助けてくれなければ、今頃私は死んでいた。
だから彼には頭が上がらない。