そこで部屋の前にたどり着いた。


「そういえば、勘介くんや和花さんはずっとここで働いているのですか?」
「そうですね。もう長いです。ふたりとも心に傷を負っていて白蓮さまが連れてきました。幽世に住まいがないふたりは最初は宿の客として過ごしておりましたが、白蓮さまになついて、ここで働きたいというので」


助けてくれた恩人なのだろう。


「白蓮さんになつくって……」


彼は優しそうだが、子供になつかれるイメージではないというか。


「白蓮さまはああ見えて意外と子煩悩なのですよ。ですから彩葉さまが幼い頃も――」


彼はそこでハッとした顔をして口を閉ざした。


「私が幼い頃って?」
「あぁっ、えっと……彩葉さまが幼少の頃からご存じで、えー、かわいいを連発されていたんです」


滑らかに語っていたのに、突然しどろもどろになる。


「幼い私をかわいいって、ちょっとヤバい人じゃないですか。あ、ヤバいあやかしか」


犯罪のにおいがぷんぷんする。