もしかして……。


「黒爛は、ひとつの命をなんとも思わない冷酷なあやかしです。子供のあやかしをわざと溺れさせ、悲鳴を聞きそれを見つけた彩葉さまが飛び出していかれて……」


それ以上は聞かなくてもわかった。
前世の私は、なりふり構わず駆けつけ、そして殺されたのだ。

今でもそんな様子を目撃したら間違いなく同じ行動をとる。


黒爛は姑息で慈悲のないあやかしだとよくわかった。


「申し訳ございません。こんなお話聞きたくなかったですよね」
「いえ、聞かなければ進めません」


なにも覚えていない私は、こうして教えてもらいながら自分の状況を把握するしかないのだ。


「心がお強いのは、以前とお変わりないですね」
「強くなんて……」


私は両親を亡くして〝かわいそうな子〟と思われたくない一心で、そして祖母に心配をかけたくなくてにこにこ笑っていただけ。
心が折れなかったわけじゃない。