「あまりに押されると逃げたくなりませんか?」
「あ……」


私の脳裏に白蓮さんの顔が浮かんだ。

彼は時々ドキッとするような発言をするが、一応私の拒否は承知しているようで適度な距離を保ってくれている。

四六時中迫られたら、ひっぱたいて現世に逃げ帰っているだろう。

でも帰ったら黒爛に襲われるのか。それも困る。


「もしかして、白蓮さまのことを考えてます?」
「いえっ、そうじゃなくて……」


と取り繕ったが図星だった。

彼はそれがわかっているのか、ほんのり頬を緩めて別の話を始める。


「突然幽世で驚いたでしょう?」
「はい。まだよくわかっていません」


白蓮さんや勘介くんに少しずつ話は聞いたけれど、まだまだわからないことだらけ。


「私に答えられることであれば、なんなりと」
「鬼童丸さんは以前の私をご存じで?」
「もちろんです。白蓮さまはそれはそれは大切にされていて、片時も離れませんでしたから」


自分で聞いておいてなんだけど、かなり照れくさい。