「彩葉さ……。あっ、失礼しました!」


顔をのぞかせた勘介くんがすぐさま目をそらして戻っていく。


「ち、違うから……」


絶対に抱き合っていると誤解された。

いや、抱き合ってはいるけれど、これは不可抗力というもので……。


「彩葉」


しかし、まだ眠っているらしい白蓮さんの口から切なげな声が漏れたので、心臓が跳ねた。

三百年も毎日毎日、私のことを考えていてくれたのだろうか。

そう考えるとなんとも言えない切なさがこみ上げてきて、彼の大きな胸板に頬をくっつけてしばらくじっとしていた。

すると耳に響いてくるトクトクという規則正しい心拍音が心地よくて、離れがたくなる。


「ん? なにしてるんだ? 襲いに来たのか?」
「はっ、違います!」


それから三分ほどしてようやく目覚めた彼に『襲いに来た』とまで言われて、すさまじい勢いで離れる。


「お、お食事ができたと伝えに来たんです」
「それで抱きつくとは大胆な……」