再び母屋のほうに戻ってすぐの大部屋に足を踏み入れると、大きな座卓と座布団が出されていた。

こうしたところも現世と変わりない。


「和花、なにごとだ?」


そこに入ってきたのは、白蓮さんほどではないがすらりと背が高く、これまた顔面偏差値の高い男性だ。

白蓮さんとは違い伸ばしてはいない髪は黒く、見た目は現世の人間とまったく変わらない。
ただ白蓮さんと同じように着物を着ているのが珍しいくらいで。


「鬼童丸さま、お食事ですよ、お食事!」


彼が白蓮さんの右腕なのか……。
いや、それより雪那さんの想い人?


たしかにかなりのいい男で、彼女が〝ぞっこん〟なのもうなずける。


和花さんはウキウキしながら箸を並べて返事をしているが、鬼童丸さんは私をじっと見つめたまま動かなくなった。

な、なに? なんかついてる?


「彩葉さま、こんなに元気になられたんですね。あぁ、よかった……」


どうやら彼は、私がまだ臥せっていると思っていたらしい。