私は早速鉄製のフライパンで調理を始めた。
きっとこのフライパンも現世で手に入れたのだろう。見慣れた形だ。
ただ、薪なので火加減だけが難しそうだ。
「和花さん、お野菜を切ってね。勘介くんはお茶を沸かしておいて」
あぁ、私はやっぱり料理が好きだ。
黒爛に襲われて毒にまでやられたという衝撃の経験をしたというのに、台所に立つと気持ちが上がっていく。
お肉を炒めることから始めて、隠し味のポン酢を最後に入れて片栗粉でとろみをつけるところまで十五分足らずで仕上がった。
「はー、いい匂いです」
勘介くんがお腹を押さえて息を吸い込んでいる。
おこげが大量にあったのであんも多めに作ったが、これを何人で分けるのだろう。
「お客さんにも出しているのよね」
「それが……そうしていたのですが、彩葉さまがいらっしゃらなくなってからまともなものが作れなくなり、食事は外から持ってきてもらうように。ただ、白蓮さまはまずくても頑張って作りさえすれば、鬼童丸さまと一緒に顔をしかめながらも食べてくださいます」